「刺身についてくる大根などの“つま”。
彩りとしてはきれいだけれど、『これは食べてもいいの?』『なんとなく残してしまうけど、マナー違反になるの?』と迷った経験はありませんか。
なかには“刺身のつまは食べてはいけない”という声もあり、理由をはっきり知らないまま避けている人も少なくありません。
この記事では、そんなモヤモヤをすっきり解消します。つまの本来の役割や、実際に食べてもいいのかどうか詳しく解説。さらに、新鮮さの見極め方やおいしく安全に食べるためのポイントまで紹介します。
刺身の「つま」は基本的に食べても大丈夫です

刺身のつまは食べても問題ありません。
スーパーや飲食店で出されるつまは、食べられることを前提に衛生管理されているからです。つまを食べる人と残す人の割合はおおよそ6:4とされ、半数以上の人が実際に口にしています。
衛生的に提供された刺身のつまは基本的に食べても安全です。ただし、自分で判断して鮮度が落ちていると感じた場合や見た目やにおいに違和感があるときは無理に食べないようにしましょう。
刺身のつまとはどういうもの?

刺身のつまとは、刺身を引き立てるために添えられる食材のことです。
つまは、刺身の見た目を華やかにし、魚の鮮度を保つ役割を担います。さらに、口の中をさっぱりさせて味を引き立てる効果もあります。地域や店によって種類は異なり、季節感を演出するために季節にあったつまを使うこともあります。
- 見た目を整え、魚の色を美しく見せる役目がある
- 刺身の水分やにおいをやわらげ、食べやすくする効果が期待できる
- 素材自体が野菜や海藻で、もともと食品として扱われている
刺身のつまは見た目の美しさと鮮度維持、味の引き立てを目的とした添え物で、食べても安全なものがほとんどです。
刺身に「つま」が添えられている理由

刺身につまがついている理由は「見た目」「鮮度サポート」「味のリセット」の三本柱です。
- 見た目の演出
白や緑が入ることで魚の赤や透明感が際立つ - 鮮度サポート
大根のけんが余分な水分を吸い、魚がベタつきにくくなる - 味のリセット
しそや大根の清涼感で口の中がさっぱりし、次の一切れの味が立つ - 香りの調整
しその香りで魚のにおいを弱め、食べやすさが上がる
抗菌作用は一部で期待できると言われますが、食中毒予防の決め手にはならず、食中毒予防には温度管理や衛生管理が重要です。
刺身の「つま」は食べてもマナー違反ではない

つまを食べてもマナー違反には当たりません。むしろ、美味しく食べることを推奨されています。食品ロス削減の観点からも、食べられるつまを残すことは食品ロスにつながります。
衛生的に問題ないつまは食べることで、食品ロス削減にも貢献できます。
食べられるつまは安心して口にして大丈夫。食べない飾りとの区別だけ意識しましょう。
刺身の「あしらい」「つま」「けん」「薬味」の違い

刺身には彩りや風味を添えるために様々なあしらい(飾りや添え物)が添えられます。一般的にはまとめて「刺身のつま」と呼ばれることが多いですが、本来は「あしらい」が正式名称で、その中に「つま」「けん」「薬味」の3種類があります。
それぞれ役割や形状が異なり、料理を華やかに見せるだけでなく、食感に変化をつけたり魚の臭みを和らげたりといった効果もあります。以下では、このつま・けん・あしらい・薬味の違いについて説明します。
「あしらい」の種類

あしらいとは、刺身をはじめ料理の盛り付けに使われる添え物全般を指す言葉です。刺身の場合、「つま」「けん」「薬味」のすべてを含めてあしらいと呼びます。つまり、あしらい=刺身に添えるもの全体のことで、見た目と味の両面で刺身を引き立てる役割があります。
刺身のあしらいには大きく分けて「つま」「けん」「薬味」の3種類あります。それぞれ役割が異なりますが、総合的に刺身を引き立てるために欠かせません。たとえばつまは彩りや香りを添える飾り、けんは食感やボリュームを与える飾り、薬味は風味を補い臭みを消す添え物と位置付けられます。
あしらい全体として見ると、単に飾りとして刺身を美しく見せるだけでなく、食材の臭み消しや、爽やかな香りづけなど実用的な効果も持っています。
刺身以外の料理でも、焼き物に添える大根おろしや柑橘、煮物に添える木の芽などあしらいが使われますが、刺身のあしらいは特に種類が豊富で繊細な工夫がされています。
種類 | 特徴・役割 |
---|---|
つま | 刺身のそばに添えて彩りや香りを加える飾り。季節感を演出し、美しく盛り付ける。食べることで口直しにも。 |
けん | 野菜を細切りにして山状に盛り付ける飾り。刺身に高さを出しボリューム感を演出する。シャキッとした食感で口直し効果も。 |
薬味 | 刺身と一緒に食べて風味を引き立てる添え物。ピリッとした辛みや爽やかな香りで魚の生臭さを和らげ、抗菌作用も持つ。 |
「つま」の役割と種類

つまとは、刺身の横や手前に添えられる飾りの総称です。刺身を引き立てる脇役ですが欠かせない存在で、見た目を華やかにし季節感や香りを添える役割があります。
つまには様々な種類があります。例えば、大根の細切り、青じその大葉、パセリ、海藻類(ワカメやトサカノリ)、食用菊の花、芽もの(芽じそ・紅たで)など多種多様です。これらは刺身に彩りや香りを加え、鮮魚の美しさを際立たせます。
大根など水分を含む野菜のつまは刺身の下に敷くことで余分な水分や臭みを吸収し鮮度を保つ効果もあります。また、大葉やミョウガのような香味野菜は爽やかな香りで口直しとなり、刺身の味を引き立ててくれます。
つまは添える位置や形によって呼び名が細かく分かれることもあります。例えば、刺身の下に敷くものは「敷きづま」、刺身に立てかけるように配置するものは「立てづま」と呼ばれます。
主な素材 | 特徴 | 食べ方・コツ |
---|---|---|
大根 | 極細千切り。シャキッと口直し | 刺身→つま→刺身の順に少量ずつ |
大葉(青じそ) | 香り | 刺身を大葉でくるりと巻いて |
花穂じそ | 上品な香りと見た目 | 指でしごいて花だけを刺身に散らす |
食用小菊 | ほのかな苦味と彩り | 花びらを少量刺身にのせる |
海藻(わかめ、トサカノリ等) | コリッとした食感、磯の香り | 醤油をつけすぎず、少量ずつ |
芽ねぎ・紅たで | ピリッとした辛み | 刺身にひとつまみのせて一緒に |
「けん」の役割と種類

けんとは、野菜を極細のせん切り(千切り)にして刺身に添える飾りです。剣のように細く尖った形に盛り付けることから「けん(剣)」と呼ばれ、主に刺身に高さとボリュームを出すために用いられます。
けんの代表例は大根の細切りです。これを「けん(剣)」のように盛り付けて刺身の後ろに添えると、刺身に立体感が生まれます。他にも、きゅうりやにんじんのせん切り、ミョウガ、ウド(山菜)、ラディッシュなどがけんとしてよく使われます。
細切りにした野菜を一度水にさらしてパリッとさせてから盛り付けることで、シャキシャキとした歯触りが楽しめます。けんは見た目のアクセントだけでなく、食感の変化を与えたり口直しとしても機能します。
主な素材 | 特徴 | 食べ方・コツ |
---|---|---|
大根のけん | 極細千切り。シャキッと口直し | 刺身→けん→刺身の順に少量ずつ。 |
きゅうりのけん | みずみずしく爽快感 | 少量を口直しに |
にんじんのけん | 甘みと彩り | 少量を口直しに |
みょうがのせん切り | 清涼感と軽い苦みと辛み | 少量を刺身に添えて一緒に。 |
うど(春) | ほろ苦さと香り | 少量を口直しに |
「薬味」の役割と種類

薬味(やくみ)とは、刺身に添えられる香りや辛みの強い調味料・野菜のことです。わさびに代表されるように少量で風味を大きく左右し、刺身の美味しさを引き立てる重要な添え物です。
刺身の薬味には主に辛味(からみ)のある食材が使われます。定番はわさびで、そのツンと鼻に抜ける辛さが刺身の旨みを引き立てます。生姜(しょうが)もよく使われ、特にアジやイワシなど青魚の刺身に添えると臭み消しになり、さっぱりとした風味が加わります。
ほかに柚子こしょうも薬味の一つで、ピリッとした辛さと柑橘の香りが白身魚などに合います。場合によっては刻みネギや茗荷(ミョウガ)、大葉など香味野菜を薬味的に用いることもあります。
さらに刺身にレモンやスダチといった柑橘類の薄切りが添えられることもありますが、これらは爽やかな酸味で風味付けをするあしらいで、広い意味で薬味の一種と言えます。薬味は少量でも魚の生臭さを和らげ、刺身の風味を引き立てる効果が大きいため、欠かせない存在です。
薬味 | 風味 | 使い方 |
---|---|---|
わさび | ツンとした辛み | 刺身に少しのせる |
おろし生姜 | さわやかな辛み | 醤油に溶くか、刺身にのせる |
刻みねぎ | 青い香り、軽い辛み | 刺身に少しのせる |
にんにく(薄切り/おろし) | しっかりした辛みとコク | ごく少量を刺身に直付け |
柚子こしょう | 柚子皮+青唐辛子の辛香 | 極少量で香りを主役に |
もみじおろし | 大根おろし+唐辛子の辛み | ポン酢と合わせて使う |
大葉(薬味使い) | 清涼感、青い香り | 細切りにして一つまみ添える |
みょうが | 爽やかな香りと軽い辛み | 刺身に直付けで香りを生かす |
レモン・すだち | さっぱり酸味と香り | 刺身に直付けで香りを生かす |
七味・一味唐辛子 | 直線的な辛み | 醤油に一振りでキレを出す |
つまを安心して食べるためのポイント

刺身のつまをおいしく、そして安心していただくために必要な「見極め」「保存」「選び方」をまとめます。
新鮮さの見極めと安心な提供元を選ぶ
新鮮なつまは「透明感」「みずみずしさ」があります。温度や衛生の管理がきちんとしているスーパーを選ぶと安心です。
- 大根のつまは、乾いて劣化すると、茶色く変色してきます。
- しっかり冷やして保管されたつまは、歯ざわりが心地よく保てます。
ポイント | よい状態 | 避けたい状態 |
---|---|---|
色 | ほのかに透ける白、ツヤがある | 灰色がかる、黄ばむ |
水分 | みずみずしい | 袋底に水たまり、ベチャつく |
形 | 細さが均一、角が立つ | 先端がつぶれる、しなびている |
新鮮さを保つ「つま」の保存方法

つまは当日〜翌日中に使い切るのが安心です。
- さっと洗う
つまは流水でさっとくぐらせます。 - 水気を切る
ザルにあげて数分置き、キッチンペーパーで軽く押さえます。 - しっとり包む
軽く湿らせたキッチンペーパーでふんわり包みます。 - 密閉して冷蔵
密閉容器に入れて冷蔵庫へ。チルド付近が理想。
こんな「つま」は食べたくない
見た目や匂いに違和感があるつまは口にしないほうが安全です。
- 変色・異臭・ベタつきは劣化のサインです。食べてもおいしくありません。
- 刺身のドリップ(肉汁のように出る液)が染み込むと、生臭く感じられます。
少しでも不快を感じたら食べるのは避けましょう。
こんな「つま」は食べてみたい

現在、刺身に添えられる大根のつまの多くが専用の機械や器具で大量生産されています。スーパーなどでは効率化と衛生管理のしやすさから、店舗のバックヤードで「つま切り機」や「桂むきカッター」を使い、一度に加工するのが一般的です。
機械加工のつまは太さや長さが均一で見た目が整い、手が直接触れる機会が少ないため衛生的。短時間で大量に作れるため価格も抑えられます。ただし、水にさらして保存されることが多く、シャキッとした食感は保たれる一方で、大根本来の香りは薄れがちです。
一方、昔ながらの包丁による手切りのつまは、繊維の立ち方や食感、香りに独自の違いがあり、細さや仕上がりには職人の技と店のこだわりが表れます。特に仕事にこだわった丁寧なお店や寿司店では、今も手切りのつまを用いることがあり、その歯触りと香りは格別です。
手作業の桂むきからの細切りは繊維が立ち、シャクッとした歯切れの良さが生まれます。盛り付け直前にほぐされたつまは空気を含んでふんわりと広がり、見た目も味も軽やかです。
丁寧な仕事をする店を選べば、刺身の満足度は一層高まります。
項目 | 機械加工のつま | 手切りのつま |
---|---|---|
主な加工方法 | つま切り機・桂むきカッターなどを使用 | 包丁で桂むき→細切り |
使用場所 | スーパー、回転寿司、量販型飲食店 | 高級和食店、寿司店 |
見た目 | 太さ・長さが均一で整っている | 細さや形に職人の個性が出る |
衛生面 | 手が触れる回数が少なく衛生的 | 職人の衛生管理が重要 |
食感 | シャキ感は安定している | 繊維が立ち、シャクッとした歯切れの良さ |
香り | 水にさらす時間が長く、香りは薄まりやすい | 大根本来の香りが残る |
見た目の仕上がり | 均一で安定感がある | 空気を含んでふんわり軽やか |
刺身の『つま』は食べてはいけない?:まとめ
この記事では「刺身のつまは食べてはいけないの?」という疑問について、役割や衛生面、マナー、そしておいしく食べるためのポイントを解説しました。
結論として、衛生的に管理された新鮮なつまは基本的に食べても問題ありません。ただし、状態の見極めが大切です。
最後に重要なポイントをまとめます。
- つまは刺身の彩りや鮮度保持、口直しなどの役割を持ち、多くが食用として添えられている
- 食べてもマナー違反にはなりません。むしろいただくことを推奨
- 新鮮なつまは透明感・みずみずしさ・爽やかな香りがあり、しっかり冷やされている
- 刺身のドリップが染み込んだつまや、変色・異臭・ベタつきがあるものは食べない
- 家で保存する場合は、軽く湿らせたペーパーで包み密閉容器に入れ冷蔵庫で保管し、翌日までに食べ切る
- 食べるときは少量を口にして口直しや香りを楽しむ。醤油は控えめにして風味を活かす
- 食べられるつまを残さずいただくことは食品ロス削減にもつながる
つまは単なる飾りではなく、刺身の味や香りを引き立てる大切な脇役です。つまがいいものだけでも刺身の満足度はぐんと高まります。
次に刺身をいただくときは、つまにも少し注目してみてください。見た目や香り、食感も含めて、より豊かな食体験が広がります。