ジャガイモとサツマイモ、どちらも私たちの食卓に欠かせない存在ですが、「ジャガイモとサツマイモは何が違うの?」「どんな料理に使い分けると良いの?」と疑問に感じたことはありませんか?
この記事では、ジャガイモとサツマイモの違いについて、さまざまな視点から詳しく解説します。毎日の献立の中で、どちらを選べばよいのか判断しやすくなるヒントをお届けします。
この記事を読むことで、ただ何となく使っていたジャガイモとサツマイモの使い方が変わり、より美味しく、より自分の生活スタイルに合った選び方ができるようになります。
ジャガイモとサツマイモの違いを理解しよう

ジャガイモとサツマイモは、どちらも「イモ」と呼ばれる野菜ですが、まったく別の植物に分類されています。
ジャガイモとサツマイモは、性質や育ち方、栄養面にいたるまで多くの違いがあります。ここでは、まず植物としての分類や原産地の違いを中心に、基本的な違いをわかりやすく解説します。
どちらも「イモ」だけど植物としては全くの別物

ジャガイモとサツマイモは、植物の分類上まったく異なる種類に属しています。
ジャガイモは「ナス科ナス属」、サツマイモは「ヒルガオ科サツマイモ属」に分類されます。これらは、まったく異なる植物の仲間です。
植物の「科(か)」という分類は、大きなグループを示していて、形や性質、生育環境などが近いものをまとめています。そのため、分類される科が異なるということは、根本的な特徴や性質に大きな違いがあることを意味します。
ジャガイモはトマトやナスと同じグループに属し、茎の一部がふくらんでできた「塊茎(かいけい)」であるのに対し、サツマイモはアサガオの仲間で、根がふくらんだ「塊根(かいこん)」です。つまり、見た目は似ていても、構造も育ち方も全然違うのです。
種類 | 科と属の分類 | 代表的な仲間 | イモの構造 |
---|---|---|---|
ジャガイモ | ナス科ナス属 | ナス、トマト | 塊茎(かいけい) |
サツマイモ | ヒルガオ科サツマイモ属 | アサガオ | 塊根(かいこん) |
「同じイモだから似ているはず」と思いがちですが、植物としての分類はまるで違います。
原産地や育ち方にも違いがあります
ジャガイモとサツマイモは、それぞれ別の地域で生まれ、育ち方にも違いがあります。
種類 | 原産地 | 好む気候 |
---|---|---|
ジャガイモ | 南アメリカ・アンデス山脈 | 涼しい気候が得意 |
サツマイモ | 中央アメリカ〜南アメリカ | 暖かい気候を好む |
原産地や気候の好みによって、ジャガイモとサツマイモの育ち方や栽培環境は大きく違います。
ジャガイモとサツマイモの構造の違い

ジャガイモとサツマイモは、どちらも土の中にできますが、できている部分の構造がまったく異なります。ジャガイモは茎がふくらんでできたもので、サツマイモは根がふくらんでできたものです。
ジャガイモは“茎の肥大”でできた塊茎(かいけい)

ジャガイモは、地中に伸びた茎の先がふくらんでできた「塊茎(かいけい)」です。
ジャガイモの芽をよく見ると、目のような小さな突起が並んでいます。これは茎にしか現れない特徴で、植物の「節(ふし)」と呼ばれる部分に芽が形成されている証拠です。この突起(芽)から新しい茎や葉が伸びてくる準備をしています。芽があることで、ジャガイモは地中でも自身を増やしていく力を持っているのです。
さらに、皮をむくと表面にうっすらとリング状の模様や横線が見えることがあります。これは節と節の間にあたる「節間(せっかん)」と呼ばれる部分で、茎特有の構造です。根にはこのような明確な区切りはなく、滑らかで連続的な形状をしています。つまり、ジャガイモには茎としての構造的な特徴がしっかりと現れているのです。
ジャガイモは、見た目は根のようでも、構造的には茎が変化してできた野菜です。そのため「塊茎(かいけい)」と呼ばれます。
サツマイモは“根の肥大”による塊根(かいこん)

サツマイモは、土の中で太く育った「根」の一部が栄養をためてふくらんだ「塊根(かいこん)」です。
サツマイモには芽がなく、皮をむいても節のような構造がありません。これは根に特有の性質であり、成長の仕方や構造が茎とはまったく異なることを示しています。
根はもともと栄養を蓄える役割をもっており、そのためサツマイモは主根(中心の太い根)が栄養を効率よくため込むように太くなります。また、表面がなめらかで節がないことで、見た目でも茎とは異なることがわかります。
さらに、サツマイモを輪切りにすると、中にある維管束(いかんそく:水や栄養を運ぶ管)が円を描くように放射状に広がっているのが見えます。この維管束の並び方は根に特有のもので、茎ではこのような放射状の配置は見られません。
加えて、サツマイモの中心には太い芯のような組織が通っており、これも根としての構造の一部です。こうした内部構造の違いからも、サツマイモが根であることが明確にわかります。
サツマイモは根の一部が大きく育った野菜で、「塊根(かいこん)」と分類されます。見た目だけでなく、構造的にもジャガイモとは全く違う仕組みを持っています。
ジャガイモとサツマイモの分類上の系統と花の特徴

ジャガイモとサツマイモは、植物としての分類や花の構造を比べると、まったく異なる系統に属しています。分類上の違いや花の形に注目することで、それぞれが持つ本来の特徴がより深く理解できます。
ナス科(ジャガイモ)とヒルガオ科(サツマイモ)の違い
ジャガイモは「ナス科」、サツマイモは「ヒルガオ科」に分類されており、植物としての系統が大きく異なります。

ジャガイモはナスやトマトと同じ「ナス科ナス属」に属しています。ナス科の植物は、葉や茎に独特の香りを持っていたり、果実の形や花のつくりに共通点があることが特徴です。
ジャガイモも例外ではなく、地中に塊茎を形成しながらも、花のつき方や葉の配置などにナス科らしさが表れます。

サツマイモはアサガオと同じ「ヒルガオ科サツマイモ属」に属しています。ヒルガオ科の植物は、つる状に伸びる性質や、花がラッパ状になることが大きな特徴です。
サツマイモも地面を這うようにつるが伸び、開花時にはアサガオにそっくりな花を咲かせます。このように見た目の似ている特徴が、分類上のつながりを示しています。
つまり、同じ“イモ”という呼び名であっても、植物学的にはまったく異なるルーツを持つ野菜なのです。
ジャガイモとサツマイモの花の形で見る系統の違い
ジャガイモとサツマイモの花の形は大きく異なっており、それぞれの系統の違いをよく表しています。

ジャガイモの花は白や薄紫色で、5枚の花びらが星形に開きます。花の中心部には黄色の雄しべが目立ち、全体としてはナスやトマトの花と非常によく似ています。
特にジャガイモの花は、品種によっては淡いピンクがかったものや、やや青みを帯びたものなどもあり、花だけを見てもさまざまなバリエーションがあります。

サツマイモの花は淡い紫やピンクで、アサガオに似たラッパ状の花を咲かせます。花の大きさはアサガオよりやや小ぶりですが、筒状にのびて先が開いた形は、まさにヒルガオ科らしさを感じさせます。
実際にはサツマイモの花は日本ではあまり見かけませんが、温暖な地域や栽培状況によっては咲くことがあります。
花の構造は植物の分類において非常に重要な特徴です。同じ科に属する植物は似た花の形を持っていることが多く、それぞれの花の形を見ることで、見た目ではわからない系統の違いが見えてきます。
ジャガイモとサツマイモの原産地と伝来

ジャガイモとサツマイモは、どちらも海外から日本に伝わってきた野菜ですが、それぞれの原産地や伝わり方には違いがあります
アンデス山脈原産のジャガイモ、日本伝来の経路
ジャガイモは南アメリカのアンデス山脈が原産で、日本へは17世紀ごろにヨーロッパ経由で伝わりました。
ジャガイモは、標高の高いアンデス山脈の冷涼な気候で育つ野菜として、数千年前から現地の人々によって栽培されていました。特に、ペルーやボリビアでは主食として重要な存在でした。
16世紀になると、スペインの探検家たちがこの地域からジャガイモを持ち帰り、ヨーロッパに広まりました。ヨーロッパでは主に貧しい人々の食料として重宝されましたが、しだいに世界中へと広まっていきました。
日本には、オランダ人によって長崎に伝えられたとされ、「ジャガタライモ(ジャガトラ=ジャカルタ)」という名前がその名残です。江戸時代には薬用や観賞用として扱われ、食用として定着するのはもう少し後になります。
熱帯アメリカ原産のサツマイモ、日本で広まった背景

サツマイモは熱帯アメリカが原産で、中国や琉球(沖縄)を経て、江戸時代に日本本土へと広まりました。
サツマイモの原産地はメキシコから南アメリカ北部にかけての熱帯地域です。乾燥にも湿気にも強く、さまざまな土地で育つ力を持っています。
16世紀にフィリピンや中国に伝わった後、琉球王国(現在の沖縄)へ入り、さらに薩摩藩(現在の鹿児島県)を通じて日本本土へと広まりました。この流れから「サツマイモ」という名前がついたとされています。
江戸時代には、飢饉(ききん)に強い作物として重宝され、特に天明の大飢饉の際には多くの命を救いました。干して保存できる「干し芋」や焼き芋としても親しまれ、庶民の味として広がっていきました。
ジャガイモとサツマイモの栄養価の違い

ジャガイモはカロリーと糖質がやや控えめでビタミンCの含有量も比較的高く、サツマイモは糖質が多めで食物繊維の量も多い傾向があります。それぞれの栄養成分の特徴を知っておくことで、料理の用途や食事の組み立てに役立つことがあります。
文部科学省の食品成分データベース(可食部100gあたり)によると、以下のような違いがあります。
栄養素 | ジャガイモ(皮付き生) | サツマイモ(皮付き生) |
---|---|---|
カロリー | 約51kcal | 約127kcal |
糖質 | 約14.2g | 約28.4g |
ビタミンC | 約28mg | 約25mg |
食物繊維 | 約9.8g | 約2.8g |
ジャガイモは加熱してもビタミンCの減少が比較的ゆるやかな点が特徴とされています(でんぷん質がビタミンCを包み込むように働くためと言われています)。
サツマイモは糖質の割合が高いため、加熱によって甘みが引き立ちやすく、自然な甘さを活かした料理やおやつなどにも使われます。
ジャガイモとサツマイモの選び方と保存のコツ

ジャガイモとサツマイモを美味しく食べるには、新鮮なものを選ぶことと、適切に保存することが大切です。見た目のチェックポイントや品種の違い、保存時の注意点を知っておくと、無駄なく美味しく使い切ることができます。
新鮮なジャガイモとサツマイモの見分け方
見た目と手ざわりで、新鮮なジャガイモとサツマイモを見分けることができます。
ジャガイモは、皮にハリがあり、シワがないものが新鮮です。緑色に変色していたり、芽が出ているものは品質が落ち始めているサインです。
サツマイモは、表面がなめらかでツヤがあり、傷や変色が少ないものが良品です。また、手に持ったときにずっしりと重みを感じるものは、水分やデンプンをたっぷり含んでいます。
ジャガイモとサツマイモの品種の選び方

調理法や料理の目的に合わせて品種を選ぶと、より美味しく仕上がります。
ジャガイモは「男爵(だんしゃく)」や「メークイン」などの品種によって、ホクホク系か、しっとり系かが異なります。
- ホクホク系(例:男爵):ポテトサラダ、コロッケ向き
- しっとり系(例:メークイン):煮崩れしにくく、煮物におすすめ
サツマイモも、「紅はるか」「安納芋(あんのういも)」「鳴門金時(なるときんとき)」などの品種があり、甘さや食感が違います。
- 甘み重視(例:安納芋):焼き芋向き
- ほどよい甘さとホクホク感(例:鳴門金時):天ぷらや蒸し物に
ジャガイモもサツマイモも、品種の特徴を知って使い分けることで、料理の満足度が上がります。パッケージに品種名が書かれていることが多いので、ぜひチェックしてみてください。
冷蔵保存はNG?家庭での上手な保存法

ジャガイモとサツマイモは、冷蔵庫よりも風通しのよい冷暗所での常温保存が基本です。
ジャガイモを冷蔵庫に入れると、低温の影響で糖分が増えすぎてしまい、加熱時にアクリルアミドという物質が発生しやすくなることがあります。サツマイモは寒さに弱く、低温障害を起こして中が黒く変色することがあります。
また、冷蔵庫内の湿度変化により、ジャガイモが乾燥したり芽が出たりしやすくなるため、常温での保存が適しています。
保存の基本は「冷やさないこと」「風通しのよい暗い場所に置くこと」。新聞紙などに包んで保存すると、湿度変化からも守ることができます。
ジャガイモとサツマイモの料理別おすすめの使い分け

ジャガイモとサツマイモは、料理のジャンルや調理方法によって向き不向きが分かれる野菜です。ホクホク、しっとり、甘みの強さ、加熱後の崩れにくさなど、それぞれの特性を理解しておくと、料理の完成度がぐんと上がります。
ここでは料理ジャンル別の使い分けと、保存性や加熱による変化の違いについて解説します。
料理ジャンル別、使いやすいのはどっち?

ジャガイモは、でんぷんが多くホクホクした食感が特徴です。煮るとほどよく柔らかくなり、カレーや肉じゃがなどの煮込み料理にもなじみやすく、崩れすぎない「メークイン」などの品種なら煮物にぴったりです。
一方、サツマイモは甘みがあるので、焼き芋や天ぷら、大学芋、スイートポテトなどのスイーツ系に向いています。また、揚げ物にすると外はカリッと、中はほくほくして満足感のある食感に仕上がります。
調理方法 | ジャガイモ向き料理 | サツマイモ向き料理 |
---|---|---|
煮る | 肉じゃが、カレー、ポトフ | 甘露煮、煮物(甘辛味) |
焼く | ガレット、グラタン | 焼き芋、スイートポテト |
揚げる | フライドポテト、コロッケ | 大学芋、天ぷら |
蒸す | 粉ふきいも、ジャガバター | 蒸し芋、茶巾しぼり |
料理の種類に応じて使い分けることで、ジャガイモもサツマイモもおいしさを最大限に引き出せます。献立を考えるときには、どの調理法に向いているかを思い出して選ぶと便利です。
保存性・加熱後の変質(状態)の比較
ジャガイモは比較的保存が利き、サツマイモは長期保存にはやや注意が必要です。また、加熱後の変化にも違いがあります。
ジャガイモは冷暗所で保存すると数週間から1ヶ月ほど保存可能です。ただし芽が出てくる前に使い切るのが理想です。サツマイモは寒さに弱く、保存には15℃前後の温度が適しています。寒すぎると中が黒く変色する「低温障害」を起こすことがあります。
また、加熱後の状態にも差があります。ジャガイモはホクホクに加熱すると崩れやすくなりますが、冷えると固くなる性質があります。サツマイモは加熱後に甘みが強くなり、冷めてもやわらかさと甘みが残りやすいです。
比較項目 | ジャガイモ | サツマイモ |
---|---|---|
保存適温 | 5〜10℃程度(冷暗所) | 約13〜15℃(やや暖かめの常温) |
保存期間 | 約2〜4週間 | 約1〜2週間(条件による) |
加熱後の食感 | 冷めると固くなりやすい | 冷めても甘みやしっとり感が残りやすい |
保存や調理後の性質も考慮して選ぶと、よりおいしく無駄なく使い切ることができます。
知っておきたい!ジャガイモとサツマイモの豆知識

ジャガイモとサツマイモは、扱い方に違いがあります。食べるときや保存するときに気をつけたいポイントや、美味しさを引き出すちょっとしたコツを知っておくと、より安心で豊かな食卓につながります。
ジャガイモの「芽」は注意!食べると危険?

ジャガイモの芽やその周辺は取り除いたほうが安全です。
ジャガイモの芽や緑色に変色した部分には「ソラニン」や「チャコニン」といった天然の成分が含まれていることが知られています。一般的に、これらの成分は摂取量が多い場合に体調に影響を及ぼす可能性があるとされています。
ジャガイモを調理する前には、芽とその周辺を包丁などでしっかりと取り除きましょう。特に皮が緑色になっている部分は、念のため厚めにむくのが安心です。
サツマイモの甘さの秘密は「追熟」にあった
サツマイモは収穫直後よりも、しばらく寝かせて「追熟」させたほうが甘みが増します。
サツマイモは収穫された直後は甘みが控えめですが、一定期間保存することで、でんぷんが分解されて糖に変化します。この過程が「追熟(ついじゅく)」と呼ばれます。特に13〜15度ほどの温度で2週間〜1ヶ月ほど保存すると、しっとりとした甘みが引き出されます。
サツマイモをより甘く美味しく食べたいときは、風通しの良い場所で常温保存して追熟させましょう。急いで食べるより、少し待つことで自然な甘さを楽しめます。
ジャガイモとサツマイモの違いと使い分け:まとめ
この記事では、ジャガイモとサツマイモの違いや使い分けについて、分類上の違いや原産地、調理方法、保存方法など詳しく解説してきました。
特に重要なポイントを以下にまとめます。
- ジャガイモはカロリーや糖質が控えめで、煮物や揚げ物、ポテトサラダなど幅広い料理に向いています。
- サツマイモは食物繊維や甘みが豊富で、おやつやスイーツ、焼き料理に適しています。
- ジャガイモの芽や緑色の部分には注意が必要で、しっかり取り除いてから調理することが大切です。
- サツマイモは「追熟」させることで甘みが増し、よりおいしく楽しめます。
- 冷蔵保存はどちらの芋にも向いておらず、風通しの良い常温の場所での保存が基本です。
ジャガイモとサツマイモは、どちらも家庭料理に欠かせない食材ですが、その特徴や適した使い方は大きく異なります。目的に合わせて使い分けることで、料理の幅が広がり、より豊かな食卓を実現できます。
ぜひ今回の内容を参考に、日々の献立に役立ててみてください。