「さしすせそ」と聞いて、料理のことだとはわかっても、具体的にどういう意味か、はっきりと理解していないという方も多いのではないでしょうか。
料理初心者だけでなく、毎日料理をしている方でも「なんとなくそうしていた」という方は少なくありません。
この記事では、そんな疑問に丁寧にお答えします。
料理の「さしすせそ」の意味とは

料理の「さしすせそ」とは、和食を中心とした味付けの基本となる調味料の順番を示した言葉です。
「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」はしょうゆ、「そ」は味噌を意味し、それぞれを入れるタイミングによって料理の仕上がりや味の染み方が変わります。この順番を守ることで、素材の味を活かしながら美味しい料理を作ることができます。
「さしすせそ」は、味付けをする順番
「さしすせそ」は調味料を入れる順番の覚え方です。
この順番は、調味料の分子の大きさや溶けやすさ、風味の変化しやすさなどに基づいています。順番を間違えると、味がしみ込まなかったり、風味が飛んでしまうことがあります。
順番にはきちんとした理由があり、それを守ることで料理がおいしくなります。
「さ(砂糖)」を一番最初に入れる理由とは?

砂糖は最初に入れることで、素材にしっかりと甘みを染み込ませることができます。
砂糖の分子は塩の分子よりも約6倍大きいため、塩よりも先に砂糖を加える必要があります。もし先に塩を入れてしまうと、塩の分子がすばやく素材に入り込み、砂糖の入り込む余地が少なくなってしまいます。
砂糖は調味の土台として、最初にしっかり入れておくことで、他の調味料の味がなじみやすくなります。
「し(塩)」を2番目に入れる理由

塩の分子は砂糖よりも小さいため、先に塩を加えると素材の中にすばやく浸透してしまい、その後に入れる砂糖が入り込みにくくなります。
たとえるなら、小さな粒の砂(塩)を先に瓶の中に詰めてしまうと、大きなビー玉(砂糖)はすき間に入り込めなくなるようなものです。先にビー玉(砂糖)を入れてから砂(塩)を流し込むと、すき間にうまく収まります。



そのため、砂糖を先に、塩は後に入れることで、両方の味をしっかりと素材に行き渡らせることができます。
「す(酢)」を入れるタイミング

酢は火を通す料理では後半に入れるのが適しています。
酢は加熱に弱く、長時間火にかけると酸味が飛んでしまいます。そのため、加熱料理では仕上げ近くに加えるのが望ましく、生で使う場合は全体の味がなじむように早めに入れることもあります。
炒め物で酢を先に入れてしまうと、香りだけが残って酸味が飛んでしまいます。
酢は、酸味を生かすようなタイミングで入れるのがポイントです。
「せ(しょうゆ)」を入れるタイミング

しょうゆは香りを残すために、仕上げの前に加えるのがベストです。
しょうゆは加熱によって香りや風味が飛びやすいため、煮物や炒め物では完成間際に加えると美味しく仕上がります。
しょうゆは風味を活かすために、できるだけ料理の仕上げ直前に入れましょう。
「そ(味噌)」を入れるタイミング

味噌は風味を大事にしたいので、加熱料理ではできるだけ料理の仕上がり直前に入れるのが理想です。
味噌もしょうゆと同じく加熱に弱く、沸騰させると風味や栄養が損なわれます。特に味噌汁では、煮立ててしまうとせっかくの香りが薄くなります。
味噌汁を作るとき、火を止めてから味噌を溶かすと、ふんわりとした香りが広がります。煮立ててしまうと、その風味がなくなってしまいます。
料理によって違いますが、味噌は火を止めたあとに溶かし入れて、香りを残すようにしましょう。
「さしすせそ」の順番とその効果

料理の味付けにおいて、「さしすせそ」の順番は単なる語呂合わせではありません。実際にこの順番を守ることで、素材への味の染み込みや風味の仕上がりに違いが生まれます。
また、酒やみりんといったその他の調味料についても、適切なタイミングで加えることが料理の完成度を高めるポイントになります
順番通りに入れるとどう変わる?味の染み込みと風味の秘密
調味料を「さしすせそ」の順番で加えると、素材に味がよく染み込み、調和のとれた風味に仕上がります。
調味料にはそれぞれ特徴があります。砂糖は分子が大きくて浸透に時間がかかりますが、塩は分子が小さくすぐに浸透します。酢やしょうゆ、味噌は香りが飛びやすく、後から入れることで風味を保つことができます。
順番を守ることで、次のような効果があります。
- 味がしっかりと素材に染み込む
- 風味が失われにくくなる
- 味のバランスが整いやすくなる
「さしすせそ」の順番には意味があります。この順番を守ることで、素材に合わせた味の浸透や風味の引き出しがうまくいきます。
酒やみりんはどこに入る?「拡張版さしすせそ」

酒やみりんは砂糖の前後に入れるのが基本です。料理の種類によって順番を調整します。
酒には素材の臭みを取る働きがあり、下ごしらえや煮込みの最初に使います。みりんは甘味や照りを出す効果があるため、砂糖と近い位置で使われますが、風味を残したい場合は後半に加えることもあります。
- 煮物:最初に入れて臭みを取りながら煮る
- 焼き物:焼く前に漬けて風味づけ
- 煮物:砂糖のあとに加える
- 照り焼き:仕上げに加えてツヤ出し
酒やみりんは「さしすせそ」に必ずしも含まれませんが、順番の工夫次第で料理の仕上がりが変わります。料理の目的や仕上がりを意識して、上手に組み合わせましょう。
「さしすせそ」の順番を守らなくてもいい?

「さしすせそ」はあくまで“基本の型”です。調味料の性質を活かすために考えられた順番ではありますが、すべての料理に絶対のルールというわけではありません。
家庭で煮魚や煮物を作るときなど、あらかじめ調味料を合わせておいたほうが効率もよく失敗が少なくなります。
ミシュラン三つ星 日本料理 菊乃井の村田さんも、あらかじめ調味料を合わせておいたほうが失敗が少ないと言っています。
動画 13:45〜
調味料選びで変わる!いつもの料理がワンランクアップ

調味料は料理の味を決める大切な存在です。いつも何気なく使っている砂糖や塩、酢やしょうゆ、味噌にも種類があります。
どれを選ぶかによって、仕上がりの味や香り、風味が驚くほど変わります。普段の料理をより美味しく仕上げるには、調味料の特徴を知って上手に選ぶことが大切です。
砂糖の種類ってどう選ぶ?
料理の種類や目的に応じて砂糖を選ぶと、甘みの質や風味が変わります。
砂糖には、上白糖・グラニュー糖・三温糖・きび砂糖など、いくつかの種類があります。それぞれ甘さの強さやコク、香りに違いがあります。
たとえば、上白糖はクセがなく使いやすく、グラニュー糖はすっきりした甘さが特徴です。三温糖は加熱によるコクがあり、きび砂糖はミネラル分を含んでやさしい甘みがあります。
お菓子作りで、グラニュー糖を使うと味がシャープに仕上がりますが、三温糖を使うと香ばしさが出てどこか懐かしい味になります。甘味は同じでも、印象が変わります。
目的に合わせて砂糖を使い分けることで、料理に深みや個性が生まれます。

塩はどれがいい?精製塩と自然塩の違いとは?

料理にこだわりたいなら自然塩が向いています。
精製塩は純度が高く、味にクセがなく均一な塩味を出せます。一方、自然塩(海水塩・岩塩など)は、ミネラルが含まれ、まろやかで深みのある味になります。ただし、自然塩は塩分濃度が低めで量の調整が難しいことがあります。
精製塩は「機械で測ったようなきっちりした味」、自然塩は「職人の手仕事のような味わい深さ」があるイメージです。
風味を活かしたい料理では自然塩を使いましょう。

酢・しょうゆ・味噌で香りや風味を引き立てる
香りや風味を大切にしたいなら、熟成や原材料にこだわったものを選ぶと良いです。
- 酢:米酢はまろやか、穀物酢はさっぱり、黒酢はコクがあり、中華に合います。
- しょうゆ:濃口は万能、薄口は色を抑えたい料理向け、再仕込みしょうゆは濃厚な味わい。
- 味噌:米味噌は甘め、麦味噌は香り高く、豆味噌はコクがあります。
これらの調味料は、発酵の過程や原材料によって味と香りが大きく変わるため、料理の種類や好みに合わせて選ぶと、より美味しさが引き立ちます。
たとえば、味噌汁に合わせる味噌を変えるだけで、毎日の食卓がまるで違う料理のように感じられます。
料理に合わせた酢・しょうゆ・味噌を選ぶことで、香りや味の表現力が格段にアップします。
日本酒とみりんの選び方

日本酒とみりんは、料理用と書かれたものよりも「本みりん」や「清酒」を選ぶと風味が良くなります。
料理酒やみりん風調味料には塩や糖分、添加物が含まれていることがあります。それに比べて、清酒や本みりんは自然な甘味やうま味があり、素材の味を引き立てます。特に煮物や照り焼きでは、仕上がりの香りやコクに大きな差が出ます。
できるだけ本物の調味料を選ぶことで、家庭料理がプロのような味わいに近づきます。

料理の「さしすせそ」の意味をやさしく解説:まとめ
この記事では、料理の「さしすせそ」の意味について、基本の調味料の意味と順番、そしてその理由や使い方の応用まで詳しく解説してきました。
「さしすせそ」は単なる語呂合わせではなく、料理をおいしく仕上げるための大切な考え方です。素材に合わせた味の染み込み方や香りを活かすタイミングが、この順番にしっかりと組み込まれています。
また、酒やみりんのように「さしすせそ」に含まれていない調味料も、タイミングや役割を知ることでより効果的に活かすことができます。
料理初心者の方も、毎日台所に立つ方も、ぜひこの知識を活かして、もっと楽しく、もっと自信を持って料理していただければと思います。
特に重要なポイントは以下の通りです。
- 「さ」= 砂糖は最初に入れて甘みをしっかり染み込ませる
- 「し」= 塩は砂糖の後に加える
- 「す」= 酢は酸味を活かすため、火を通す料理では後半に入れる
- 「せ」= しょうゆは香りを残すために仕上げ近くで加える
- 「そ」= 味噌も風味を大事にするため、火を止めてから溶かすのが基本
「さしすせそ」はあくまで“基本の型”です。場合によっては、「さしすせそ」の順番を気にせずに料理をすることも必要です。