イワシの塩焼きはシンプルながら奥深い料理です。香ばしい皮、ふっくらとした身、そして食べるかどうか迷うのが「内臓」でしょう。
しかし、イワシの内蔵についてこんな疑問を持ったことがありませんか?
- 「内臓は取ったほうがいいの?」
- 「食べても大丈夫?」
新鮮なイワシは内臓まで食べられると言われますが、実際には鮮度や焼き方、そして好みによって答えは変わります。
この記事では、イワシを内臓ごと塩焼きにする魅力や美味しく食べるためのコツを徹底解説します。さらに、新鮮なイワシの見極め方、下処理の手順、焼き方のポイント、内臓の苦味を和らげる薬味や添え物の活用法までわかりやすくお伝えします。
内臓ごと食べて旨味と苦味を楽しむのも良し、あえて取り除いてすっきり味わうのも良し。どちらを選んでも、イワシの塩焼きがもっと美味しく、もっと特別な一品になる方法を、この記事で見つけてください。
イワシの塩焼きは内臓まで食べられます

イワシは塩焼きにすると内臓ごと食べられる魚です。
新鮮なイワシを選び、適切に火を通せば美味しく食べることができます。内臓には独特の旨味や栄養が詰まっており、苦味も含めて丸ごとの美味しさを味わうことができます。
イワシは無胃魚なので内蔵を食べやすい
イワシは「無胃魚(むいぎょ)」といって胃を持たない魚で、内臓に食べかすがほとんど残らないため比較的きれいな状態を保っています。これにより、内臓特有の臭みや不快な風味が出にくく、そのまま食べても抵抗が少ないのが特徴です。
無胃魚は消化が早く食べた物をすぐに腸へ送るため、鮮度の良い状態であれば塩焼きなどで丸ごと食べるのに向いています。
このような胃を持たない魚を「無胃魚(むいぎょ)」と呼び、サンマやサヨリ、トビウオなども同じ仲間です。そのため、胃の中に残った餌が臭くなる心配が少ないのです。

無胃魚とは、文字通り「胃を持たない魚」のことを指します。多くの魚は胃を持ち、その胃で消化液を分泌し食べ物を消化しますが、無胃魚はこの過程を持たず、腸で直接消化を行います。
イワシは胃を持たないため内臓の臭みが少なく、鮮度が良ければ塩焼きにして丸ごと食べても美味しくいただけます。焼くことで香ばしさが加わり、内臓特有の旨味と軽い苦味が絶妙なバランスで楽しめます。

イワシの内臓は取らずに塩焼きしても大丈夫

イワシは鮮度が良ければ内臓ごと塩焼きにしても美味しく食べられます。
加熱をしっかり行うことで安全性も確保でき、内臓の旨味も引き立ちます。新鮮なイワシは内臓の風味がよく、苦味が控えめなため、身と一緒に楽しむと美味しさが倍増します。
- 内臓には寄生虫が潜んでいる場合もありますが、十分な加熱で死滅します。
- 鮮度の良い個体は内臓の傷みが少なく、苦味や臭みが穏やかです。
- 身と内臓を同時に加熱することで、脂の旨味と内臓のコクが混ざり合い、風味が深まります。
鮮度の高いイワシを選び、適切な火加減でしっかり加熱すれば、安全で香り高く、身だけでは味わえない旨味を堪能できます。

イワシの内臓を安全に美味しく食べるためには、鮮度が極めて重要です。漢字で「魚辺に弱い」と書くことからも分かるように、イワシは鮮度が落ちやすい魚です。最低条件としては、生で刺身として食べられる鮮度であることが必要です。
- パックやラベルに「刺身用」と記載されているものを選ぶ
- 記載がない場合は、鮮魚売り場の店員に「内臓まで食べられますか?」と確認する

厚生労働省のガイドラインによると、魚介類に含まれる寄生虫や細菌は、加熱処理によってほぼ完全に死滅します。特に、寄生虫(アニサキス)は、70℃以上で1分間以上加熱することで死滅します。

目刺しや丸干しは、頭から尾、内臓まで一体感のある味を楽しめます。目刺しや丸干しが内蔵まで食べられるということは、イワシの塩焼きも内臓も含めて美味しく食べられる魚であることの証でもあります。
内臓に含まれる旨味:苦味がクセになる

イワシの内臓には独特の旨味があり、適度な苦味がクセになる美味しさがあります。特に鮮度の高いイワシでは、この旨味と苦味のバランスが絶妙で、身と一緒に食べたときの満足感が増します。身と内臓を含めて食べることで、イワシ本来の味わいを丸ごと楽しむことができます。
- 内臓には特有の苦味と深いコクがあります。これらは加熱によって香ばしさが加わり、さらに風味が増します。
- 旨味成分が内臓に凝縮されており、身だけでは出せない複雑で奥行きのある味わいになります。
- 苦味は脂の甘みや旨味と合わさると、単なる苦味ではなく大人向けの上品な風味へと変化します。
- 焼きたての内臓は香ばしく、苦味が心地よい後味となり、次の一口を誘います。
イワシの内臓は、旨味と苦味が混ざり合った大人の味わいです。塩焼きにすることで香ばしさが加わり、その複雑な風味が一層引き立ちます。内臓を味わうことで、イワシの持つ本来の魅力を最大限に感じることができます。
イワシを内臓ごと塩焼きにする手順とポイント

イワシを内臓ごと塩焼きにする場合は、下処理から焼き方までの流れが重要です。正しい手順を踏むことで、香ばしくて旨味のある仕上がりになります。特に内臓を残す場合は、鮮度と加熱具合が味と安全性を左右します。
下処理の流れ
鱗を取って洗い、水気を拭き取ったあと、塩をなじませて下味をつけ、出てきた水分を拭き取ってから切込みを入れます。
- 鱗を取ることで口当たりが良くなり、見た目も美しくなります。
- 洗って水気を拭くことで、塩を振りやすくなります。
- 多めの塩をまぶして20〜30分置くことで、余分な水分と臭みが抜け、身が締まります。
- 出た水分を拭き取ることで、焼いたときに表面がパリッと仕上がります。
- 切込みを入れることで火の通りがよくなります。
丁寧な下処理は、美味しさと食感アップに直結します。手間を惜しまず、順番通りに行うことが美味しさの秘訣です。
焼き方のポイント
イワシのグリルに盛り付ける方を植えにして中火で焼き始め、途中で裏返し、全体に均等な焼き色をつけます。
- 焼く前にお好みで塩を振ってください。
- 中火で焼くと皮がパリッと仕上がり、身の水分を閉じ込められます。
- 裏返す回数を最小限にすることで、身崩れを防げます。
- 内臓ごと焼く場合はしっかり火を通すことで、安全に食べられます。
火加減を保ちながらじっくり中まで火を通すことで、内臓も身も美味しく仕上がります。
イワシの塩焼きに合う薬味や添え物

大根おろしやすだち、レモンなどの柑橘類、青じそや生姜はイワシの塩焼きによく合います。みょうがや蓼酢(たです)、柚子胡椒なども加えると、香りや風味に新しい広がりが生まれます。これらを組み合わせることで、脂ののったイワシも最後までさっぱりと楽しむことができ、内臓の旨味やほのかな苦味が一層引き立ちます。
薬味や添え物は、イワシの塩焼きをより食べやすくし、香りや味の幅を広げます。シンプルな塩焼きにアクセントを加えることで、満足度がぐっと上がります。

酸性の薬味や添え物は苦みを抑えてくれる
すだちやレモン、蓼酢などの酸味を持つ薬味や添え物は、イワシの内臓特有の苦みを和らげてくれます。
酸味には、苦味の刺激をマイルドにする働きがあります。酸味が加わると味覚のバランスが変わり、苦味が舌に残りにくくなります。さらに、酸味は脂っこさも中和し、さっぱりとした後味にしてくれれます。
イワシの旬

6〜8月の夏イワシ
この時期は産卵前で脂がのり、身が柔らかくジューシーです。特に梅雨の時期に水揚げされる「入梅イワシ」は有名で、濃厚な旨味と脂の甘みが際立ちます。塩焼きや刺身など、生でも加熱でも旨味を感じやすい状態です。
冬至から初冬にかけての“下りイワシ(寒イワシ)”
冬の寒い海で育ったイワシは脂の質が良く、身が引き締まり濃厚な味わいになります。特に塩焼きや煮付けにすると、旨味が際立ちます。

新鮮なイワシの見極めと保存について

新鮮なイワシを選び、正しく保存することは美味しさと安全性のために欠かせません。鮮度は見た目や内臓の状態から判断でき、保存の方法次第で風味が大きく変わります。
目・鱗・お腹の張りなどチェックポイント
目が澄んでいて透明感があり、鱗がしっかりとつき、お腹がふっくらしていてハリがあるイワシは新鮮です。さらに、皮の色つやが鮮やかで、触ったときに身がしっかりとしていることも新鮮さの目安になります。
- 目が濁っていたりへこんでいると鮮度が落ちている可能性があります。
- お腹がへこんでいる、またはやわらかい場合は鮮度が低く、内臓が傷み始めている可能性があります。
目の透明感、鱗の付き具合、お腹の張りを確認することで、誰でも簡単に鮮度を見極められます。
内臓の状態でわかる鮮度の善し悪しと、購入後の保存対策

イワシは鮮度が落ちやすく足がはやい魚として知られています。
内臓の入ったままのイワシを保存する場合は、購入後は内臓ごと保存せず、すぐに取り除いてから保存するのが理想です。
食材の鮮度が落ちやすく、日持ちしないことを意味する言葉です。鮮度が命の魚や生ものを扱うときによく使われる、日本らしい表現です。
内蔵を取り除いて冷蔵保存する場合は、1日以内(翌日)、冷凍保存なら2〜3週間が目安です。
- 新鮮な内臓は色がきれいで崩れていませんが、鮮度が落ちると黒ずんだり溶け始めます。
- 内臓は傷みやすく、放置すると全体に臭みが移ります。
- 保存の際は内臓を取り除き、ラップや保存袋に包んで冷蔵または冷凍すると風味が保てます。
内臓の状態は鮮度を見極める重要な手がかりです。購入後はなるべく早く内臓を取り除き、適切な方法で保存することで、美味しさを長く保てます。
イワシの塩焼きは内臓まで食べられる:まとめ
この記事では、イワシの塩焼きにおける内臓の扱い方や魅力、安全性、美味しく食べるためのポイントについて解説しました。シンプルな料理だからこそ、ちょっとした知識と工夫で味わいが大きく変わります。
以下に特に重要なポイントをまとめます。
- 新鮮なイワシであれば、内臓ごと塩焼きにしても安全に食べられる
- 内臓には旨味成分が凝縮されており、適度な苦味が大人の味わいを生む
- 鮮度の見極めは「目の透明感」「鱗の付き具合」「お腹の張り」がポイント
- 下処理では鱗を取り、塩をなじませて余分な水分と臭みを抜くことが重要
- 焼き方は中火で焼き、裏返しは最小限にして身崩れを防ぐ
- 酸味のある薬味は苦味を和らげ、後味をさっぱりさせる
内臓を食べるかどうかは人それぞれの選択ですが、その味わいを知ることで、自分なりの楽しみ方が見つかります。
内臓ごと味わえば旨味と香ばしさが際立ち、取り除けばすっきりとした味を堪能できます。どちらの食べ方でも、鮮度と下処理、火加減を大切にすれば、イワシの塩焼きは格別な一品になります。今日からは、自分の好みに合わせた“最高の一尾”を焼き上げてみてください。