ラムとマトンの違いがすぐ理解できる!気になる味やクセなどを解説
ラムとマトンの違いについて悩んだ経験はありませんか?
日本で羊肉の人気が高まるにつれ、ラムとマトンの違いはよく話題になりますが、多くの人が「なんとなく若い羊とそうでない羊」という程度の認識で、具体的な違いや選び方については自信が持てていないものです。
多くの人が、ラムとマトンの違いに以下のような疑問を持っています。
- ラムとマトンの違いを簡単に知りたい
- どちらが自分の好みに合うか判断したい
- 食べやすいのはどっちか知りたい
そんな不安や疑問に寄り添いながら、ラムとマトンの違いを分かりやすい言葉で丁寧に解説します。味わい、香り、肉質、料理への向き不向き、選び方のポイントまで、実際に使える知識をまとめました。
ラムとマトンの違いって?

ラムとマトン。どちらも羊のお肉ですが、この二つの最大の違いは羊の年齢です。簡単に言えば、若い羊の肉がラム、成長した羊の肉がマトンと区別されます。
ラムは一般的に柔らかくクセが少ないのが特徴で、マトンは濃厚な旨味と風味(独特の香り)が強く感じられます。
ラムとマトンは成長過程での名前の違い


羊肉の国際的な定義では、一般的に生後1年未満の子羊の肉をラム、生後2年以上の成羊の肉をマトンと定めています。この年齢の差によって、お肉の食感や風味が大きく変わります。
ラムはまだ成長途中であるため、肉質が柔らかく、羊肉特有のにおい(クセ)が少ないのが特徴です。一方、マトンは成長している分、肉の繊維が太くなり、味や香りが濃厚になります。この濃厚さが、マトン独特の深い旨味や風味となるのです。
羊の年齢(成長段階)は「永久歯」の数が基準

ラムやマトンといった羊肉の呼び分けは、単に「およそ何歳」という目安だけでなく、羊の「永久歯」の数を調べることによって、より厳密に決められています。
羊の年齢を正確に測る最も信頼できる方法が、口の中の歯の状態を確認することです。特にオーストラリアやニュージーランドなど、羊肉の主要な生産国では、肉の品質を一定に保つために、この「永久歯の有無」が重要な公式基準とされています。
| 種類 | 定義の基準(年齢の目安) | 永久歯による定義 |
|---|---|---|
| ラム | 生後1年未満 | 永久歯がまだ一本も生えていない |
| ホゲット | 生後1~2年未満 | 永久歯が一本だけ生えている |
| マトン | 生後2年以上 | 永久歯が二本以上生えている |
この基準により、永久歯が一本でも生えているかどうかが、「ラム」とそれ以外の肉(ホゲット・マトン)を分ける最も重要な境界線となります。永久歯が生えるということは、羊が成長し、草などをしっかり噛んで食べるようになるため、肉の風味や硬さが変化するサインなのです。
永久歯:成長した後、二度と生え変わらない、一生使い続ける歯のことです。羊の場合は、この永久歯の生え始めが生後約1年頃とされています。
ラム(Lamb)
生後1年未満の子羊の肉を指します。永久歯(大人の歯)がまだ一本も生えておらず、乳歯のみの状態の羊です。肉が柔らかく淡白で、羊独特の匂いも控えめです。
ホゲット(Hogget)
生後1年以上2年未満の若い羊の肉です。ちょうど永久歯が生え始めた段階の羊で、初めての永久歯が1本だけ生えている状態にあたります(※永久歯1本とは、最初の前歯のペアが生え揃ったことを意味します)。ラムより少し成長していますがマトンほど歳をとっていない中間の肉質で、適度な柔らかさとコクを兼ね備えています。
ホゲットという分類は中間的で特殊なため、国や市場によってはあまり使われない場合もあります。羊肉をラムとマトンの2種類だけで区別している国も多く、流通量の少ないホゲット肉は実際には「ラム」または「マトン」として扱われていることもあります。
マトン(Mutton)
生後2年以上経った大人の羊の肉です。永久歯が少なくとも2本以上は生え揃った羊で、年齢とともに永久歯の本数も増えていきます。肉質はラムに比べて引き締まって、脂肪や風味も濃厚になるのが特徴です。
「ミルクラム」「ヤングラム」「スプリングラム」って何?

「ミルクラム」や「ヤングラム」、「スプリングラム」は、一般的なラム肉よりもさらに若い、希少な羊肉を指す特別な呼び方です。ラムは「生後1年未満」と定義されますが、その中でもさらに細かく分けて呼ぶことがあります。
生後わずか数週間から約3ヶ月程度の、まだ母乳だけを飲んで育っている子羊のお肉です。この時期の肉は非常にデリケートで、驚くほど柔らかく、羊肉の風味もほとんど感じられません。流通量が少ないため、高級食材として扱われます。
生後3ヶ月~6ヶ月程度の、ラムの中でも比較的若く、柔らかさとクセの少なさが際立っているお肉です。 これらは、一般的なラム肉(生後1年未満)よりも若いため、より希少で、繊細な食味を楽しむことができます。
羊肉の主要生産国であるニュージーランドにおいて、春から初夏の最も栄養価が高い時期の牧草を食べて育った、月齢3ヶ月から6ヶ月未満の非常に若い子羊のことを指します。その特別な環境で育つため、肉質が柔らかく、羊肉特有のクセが少ないのが特徴の、高級で旬のラム肉です。
ラムとマトンの味わいと食感の違い

ラムとマトンは同じ羊の肉ですが、年齢の違いによって味わいや食感がはっきり分かれます。ラムはやわらかくて軽い味わいで、マトンは噛むほどにコクが出る力強い味といえます。
ラムとマトンの肉の見た目の違いと見分けるコツ

ラムとマトンを見分ける一番わかりやすいポイントは、赤身の色と脂身の見え方です。ラムは明るくて淡い赤色で脂が白く薄く付き、マトンは濃い赤色で脂が厚く黄みがかって見えることが多いといえます。
羊は年齢を重ねるほど筋肉が発達し、血色素(ミオグロビン)が増えるので赤身の色が濃くなります。若いラムの肉は、筋肉の繊維が細く水分も多いため、明るくてやわらかそうな色合いになります。一方で大人のマトンは筋肉がしっかりしていて、赤身の色も深く濃い傾向があります。
ミオグロビン: 筋肉の中に含まれる色素タンパク質のことで、この量が多いほど肉の色が濃く(赤く)見えます。
脂身にも違いがあります。ラムの脂は比較的薄く付き、白くすっきりした見た目です。マトンの脂は厚みがあり、やや黄みを帯びることがあります。これは、年齢を重ねることで脂肪に含まれる成分が変化し、風味も強くなるためです。
このような変化によって、同じ部位でもラムとマトンは並べてみると色と脂の雰囲気がはっきり違います。パックされた肉を選ぶときは、ラベルだけでなく赤身と脂身の色も一緒に確認すると判断しやすくなります。
| 種類 | 赤身の色 | 脂の色と特徴 |
|---|---|---|
| ラム | 明るい薄い赤色、もしくはピンク色に近い | 白に近く、サラッとしている。量が少なめ |
| マトン | 濃い暗めの赤色、または赤褐色に近い | 黄色やクリーム色を帯びており、量が多い |
ラムとマトンの味わいの特徴

ラムはあっさりしていてやさしい味わいが特徴で、マトンは濃厚で香りも力強い味の肉といえます。ラムは初めて羊肉を食べる人でも取り入れやすく、マトンは羊らしい深いコクを楽しみたい人向きです。
ラムは生後間もない若い羊の肉なので、脂肪の質が軽く、香りも穏やかな傾向があります。筋繊維も細く、火を通してもやわらかさを保ちやすいため、塩と胡椒だけのシンプルな味付けでも肉の甘みを感じやすくなります。
ラムの脂は融点(溶け出す温度)が低いので、口の中で溶けやすく、サラッとした食感になります。これが、あっさりとして食べやすい理由です。
マトンは年齢を重ねた羊の肉です。運動量が多く筋肉が発達しているため、噛むほどにうま味が出てくるしっかりした食感になります。脂にも独特の香りがあり、香辛料と合わせることでその濃厚さが料理の個性になります。
マトンは長く成長し、豊富な牧草を食べているため、肉の中に旨味成分がしっかり蓄積されています。また、羊肉特有の風味(クセ)は、羊の脂肪に含まれる特定の成分によるもので、年齢が高いほどこの成分が増えるため、風味も強くなります。この風味が、マトンならではの濃厚な味わいとなるのです。
カレーや煮込み料理でマトンがよく使われるのは、長く煮込んでも味が薄くならず、むしろスープやソースにうま味が溶け出すからです。
ラムとマトンの臭みやクセの違い

羊肉の独特な香り(一般的に「臭み」や「クセ」と呼ばれるもの)の主な原因は、羊の「脂肪(脂身)」に蓄積される特定の成分であり、これは羊が食べる「牧草」に由来します。
特に牧草由来の香りは、業界では「グラス臭」とも呼ばれこの香りが人によっては臭みに感じられることがあります。
グラス臭(牧草由来の香り)

「グラス臭」とは、草食動物特有の香りのことで、羊が食べる牧草に由来するものです。
羊が餌として食べる牧草には、光合成に関わる葉緑素(クロロフィル)が多く含まれています。この葉緑素が羊の体内で分解される過程でフィトールという物質に変化し、それが脂肪の中に蓄積されます。
このフィトールが羊肉特有の香り(青草のような香り)の元となり、これが「グラス臭」と呼ばれるのです。
- 葉緑素(クロロフィル):植物が持つ緑色の色素で、光合成を行うために必要なものです。
- フィトール:葉緑素が動物の体内で分解されてできる物質で、羊肉特有の香りの元になると考えられています。
ラムとマトンのグラス臭の違い

ラムは羊肉特有の香りが非常に少なくマイルドですが、マトンは成長している分、その香りが強く濃厚に感じられます。
ラムは若い羊であるため、臭いの元となるグラス臭の蓄積が少なく、脂肪もサラッとしています。そのため、羊肉独特の香りが抑えられ、マイルドで食べやすいと感じられます。
マトンは長い期間かけて成長し、草を食べ続けているため、臭いの元となるグラス臭が羊の体内に多く蓄積されます。特に、黄色みがかったマトンの脂身にこの成分が多く含まれており、加熱するとその強い香りが立ち上るのです。
国産のラム肉はグラス臭がほとんどない

羊肉の香りは、主に脂に含まれる成分と、羊が日ごろ食べている餌の影響で強くなったり弱くなったりします。海外の広大な牧場では、羊は季節ごとにさまざまな草を自由に食べて育つため、その草の香りが脂に移りやすい特徴があります。これが「グラス臭」と呼ばれる香りにつながります。
日本国内で生産されている羊肉、特に国産のラム肉は、一般的に輸入される羊肉と比べて「グラス臭」がほとんど感じられないものが主流です。これは、日本の羊肉の生産者が、羊の風味を大きく左右する「餌(飼料)」に特別な工夫やこだわりを持っているからです。
日本の羊肉生産者は、羊を放牧地で自由に草を食べさせるだけでなく、穀物(トウモロコシや大麦など)を中心とした栄養価の高い配合飼料を与えていることが多いです。この穀物メインの餌を与えることで、グラス(牧草)由来の成分の蓄積が少なくなり、グラス臭が抑えられます。
日本市場では、柔らかくクセのない肉質が好まれる傾向があります。そのため、国産羊肉は消費者の好みに合わせ、臭みが少なく、繊細な旨味を持つように育てられています。
国産の羊肉は、生後1年未満の「ラム」として出荷されることが多く、月齢が若いことも、臭みが少ない大きな理由となっています。 これらの理由から、国産ラム肉は非常に繊細で、羊肉特有のクセが苦手な人でも美味しく食べられる品質を実現しています。
配合飼料:栄養バランスを考えて、複数の原材料(穀物、タンパク質、ビタミンなど)を混ぜ合わせて作られた餌のことです。
羊肉の主な4品種

羊肉は「ラム」や「マトン」のように年齢で分類されますが、もとになる羊の「品種」も重要で、世界には数多くの種類があり、それぞれ肉質や脂の乗り方、風味が異なります。主に肉用として飼育されている肉用種と羊毛と肉用を兼ねた毛肉兼用種が、私たちが普段食べている羊肉となります。
| 品種名 | 主な用途 | 外見の特徴 |
|---|---|---|
| サフォーク種 | 肉用種 | 顔と脚が黒く、筋肉質でがっしりしている |
| メリノ種 | 毛用種 | 全身が白く、密度の高いウールに覆われている |
| ロムニー種 | 毛肉兼用種 | 白い顔で丈夫な体。環境適応能力が高い |
| コリデール種 | 毛肉兼用種 | 白い顔で体格が良く、肉付きが良い |
サフォーク種

サフォーク種は、世界で最も人気のある肉用羊の一つです。成長が早く、肉量が豊富で、赤身と脂肪のバランスに優れているため、主に高品質なラム肉を生産するために利用されます。
顔と足首から下全体が黒い毛で覆われているのが大きな特徴です。体は大きく、筋肉質でがっしりとしています。
サフォーク種は成長が非常に早いため、子羊の時期に最高の状態で出荷されます。肉質はきめ細かく、脂肪が適度に付くため、ジューシーで柔らかいラム肉になります。主に食肉用として特化しており、その優れた肉質から、各国でラム肉の代表品種として位置づけられています。
メリノ種

メリノ種は、元々極めて高品質で柔らかい羊毛(メリノウール)を採るために品種改良された羊です。肉の生産にも使われますが、その価値は羊毛生産に重きが置かれています。
顔は白く、体全体が細かく密度の高い羊毛に覆われています。オスは立派な角を持っていることが多いです。
メリノ種は羊毛生産がメインのため、体のサイズは他の肉用種に比べてやや小さめです。肉はしっかりとした風味があり、主にマトン肉や、独特の風味を活かしたい料理に利用されます。特にオーストラリアやスペインで多く飼育されています。食肉として利用されるのは、ウール生産を終えた後のものが多いです。
メリノ種は、世界最高級のウールを生み出すことで知られ、肉はしっかりとした風味のあるマトンとして利用されることが多い品種です。
ロムニー種

ロムニー種は、環境適応能力が高く、丈夫で飼育しやすいという特徴を持ち、ニュージーランドなどの主要生産国で最も多く飼育されている万能な品種の一つです。肉質も安定しており、ラムとしてもマトンとしても利用されます。
顔は白く、角はありません。体はがっしりしており、特に湿気の多い環境や厳しい気候にも耐えられる強靭さを持っています。
ロムニー種は、肉用と毛用の両方の特徴を持っています。肉質は安定しており、特に脂肪の乗りが良いため、ジューシーな肉が生産されます。
ニュージーランドの羊の総数の約半分を占めるほど主要な品種です。ラム肉として出荷されるだけでなく、丈夫さから繁殖能力も高いため、羊肉生産の基盤を支える品種となっています。
コリデール種

コリデール種は肉(食肉)と毛(ウール)の両方を高いレベルで生産できる「毛肉兼用種」として世界中で広く飼育されている品種です。特に肉質の良さと、柔らかく太めの良質な羊毛を兼ね備えている点で評価されています。
非常に早く成長する性質があり、筋肉が発達しているため、上質な赤身肉を多く得ることができます。肉質はきめ細かく、適度な脂肪がつくため、ジューシーなラム肉として利用されています。
羊毛(ウール)はメリノ種ほど細くはありませんが、比較的柔らかく、長い繊維を持つ良質な中級ウールとして高い評価を受けています。
コリデール種は、丈夫で環境への適応能力が高いため、世界中の様々な気候の地域(特に南米やオーストラリアなど)で広く飼育されています。
ラムとマトンの適した料理と調理法

ラムとマトンは、その肉質や風味の違いから、それぞれに向いている料理や調理法が明確に分かれます。簡単に言うと、柔らかくクセの少ないラムは短時間で火を通す料理に、濃厚な旨味を持つマトンは煮込みや濃い味付けの料理に適しています。
ジンギスカンをラムとマトンで作ったときの違い

ジンギスカンはラムで作ると軽くて食べやすい仕上がりになり、マトンで作ると香りとコクがぐっと強く出ます。どちらも美味しいですが、ラムは万人向け、マトンは羊らしさをしっかり味わいたい人向きといえます。
ジンギスカンは鉄板や専用鍋で羊肉と野菜を一緒に焼き、タレと絡めて食べる料理です。ラムを使うと肉がやわらかく、脂もさらりとあっさりしていて食べやすく、羊肉初心者にも人気です。タレの味とバランスよくまとまります。香りも控えめなため、キャベツや玉ねぎの甘さを邪魔しません。
マトンを使うと、肉の香りとコクが前面に出てきます。タレにしっかり漬け込むと、スパイスやにんにくの風味と合わさって力強い味になります。その一方で、焼き過ぎると硬くなりやすいので、火加減に注意が必要です。野菜にも羊のうま味がしっかり移るため、全体として濃厚な一皿になります。
ラムに向いている料理

ラムはあっさりとした風味とやわらかい肉質をいかせる料理に向きます。焼き肉やラムラックのローストなど、シンプルに焼く料理と相性が良い肉です。
強い火でさっと焼き、中心を少し赤みが残る状態(ミディアムレア)で仕上げることで、ラムの柔らかさとジューシーさを最大限に引き出すことができます。焼いたラム肉に塩やレモン、軽いタレで食べると良さが引き立ちます。
骨付きのまま塊で焼くことで、骨から出る旨味が肉全体に広がり、ラムの上品な香りを楽しむことができます。表面は香ばしく、中はしっとり柔らかく仕上がります。 ラムの肉本来の繊細な味わいを活かすため、味付けは塩胡椒やハーブなど、シンプルなものがおすすめです。
ラムは加熱しすぎないことが最大のポイントです。焼き肉やローストといった「焼く」調理法で、その柔らかさと上品な味わいを堪能しましょう。
- ラムラック:羊のあばら骨の部分で、骨付きのままロースト(塊焼き)によく使われる部位です。
- ミディアムレア:肉の加熱具合を示す言葉で、肉の中心部分がほんのり赤みを残した状態のことです。
マトンに向いている料理

マトンは濃厚な味としっかりした香りをいかせる料理に向きます。カレーや煮込み料理、味付けを強めにした炒め物など、濃厚系のメニューと相性が良い肉です。
マトンは年齢を重ねた羊の肉なので、筋肉が発達して噛みごたえがあります。脂にも香りとコクがあり、長時間の加熱でも味がぼやけにくい性質があります。この特徴は、スパイスや香味野菜をたくさん使う料理と組み合わせると、深い味わいにつながります。
カレーでは、マトンの強いうま味がスパイスの香りと混ざり合い、ソース全体に厚みが出ます。トマト煮込みや赤ワイン煮込みでも、マトンのコクがソースを支えてくれます。味噌や醤油を使った和風の甘辛炒めにしても、ご飯が進むしっかりした味になります。
臭みを抑えて美味しく食べるコツ

羊肉特有の臭みを抑えて美味しく食べるには、臭みの元となる「余分な脂肪」を取り除く下処理と、香りの強い調味料やスパイスで風味を補うマリネ(漬け込み)が非常に有効なコツです。
包丁で黄色っぽい脂肪(マトンに多い)や筋をできるだけ切り取ります。これが最も効果的に臭みを抑える方法です。
肉から出る赤い水分(ドリップ)は臭みの元となるため、キッチンペーパーでこまめに拭き取ることが大切です。
ニンニク、ショウガ、タマネギ、ワイン、牛乳などに漬け込むことで、これらの強い香りの成分が臭みを包み込み(マスキング)、風味を良くします。
クミン、コリアンダー、ターメリックなどの強い香りのスパイスは、特にマトン料理において、羊肉の濃厚な風味を活かしつつ、気になるクセを打ち消す役割を果たします。
強く焼き付けて香ばしさを出すことも、臭みを感じにくくする方法のひとつです。
ラムとマトンを食べるならどっちを選ぶ?

ラムとマトンはどちらも魅力がありますが、「どんな味が好きか」「どんな料理に使うか」で選ぶ肉が変わります。やさしくて食べやすい味を求めるならラム、濃厚で力強い味を楽しみたいならマトン、両方の中間を試したいならホゲットが候補になります。
初めて羊肉を食べるならラムがおすすめ

羊肉を初めて食べる人や、柔らかさ、クセの少なさを重視する人は、断然ラム肉を選ぶことをおすすめします。
クセも穏やかな傾向があります。羊肉が苦手と感じる人の多くは、マトンの強い香りや噛みごたえを想像していますが、ラムはそのイメージとは違い、あっさりした味わいです。
シンプルな塩焼きやガーリックソテーにしても、ラムなら肉の甘みが前に出ます。レモンやハーブを少し添えるだけで十分な一皿になるので、料理の手順も複雑になりにくい特徴があります。
「食べやすさ」と「繊細な旨味」を優先したい初心者の方は、まずはラム肉から試してみてください。
羊肉のコクや濃厚さを求めるならマトン

羊肉のコクや濃厚な味わいをしっかり楽しみたい人にはマトンが向きます。羊特有の香りが好きな人、または香りが気にならない人にとって、マトンは満足感の高い肉になります。
マトンは生後2年以上の成羊の肉です。運動量が多く筋肉が発達しているため、噛むほどにうま味が出るしっかりした食感になります。脂にも羊らしい香りとコクがあり、香辛料やハーブ、味噌や醤油などと組み合わせたときに、独特の深い味わいを作り出します。
ラムでは物足りないと感じる人にとって、マトンは「これぞ羊肉」と思わせる存在です。長く煮込む料理や、スパイスを効かせたカレー、しっかりしたタレに漬け込む焼き物などで本領を発揮します。
ラムとマトンの中間を食べてみたいならホゲットがおすすめ
ラムとマトンの両方の良さを少しずつ味わってみたい人にはホゲットがおすすめです。ホゲットは柔らかさとコクのバランスがよく、「ラムでは軽いけれどマトンは少し重い」と感じる人にちょうどよい選択肢になります。
ホゲットはラムより少し成長した若い羊の肉を指します。年齢でいうとラムとマトンの中間にあり、肉質もその位置づけのとおりです。ラムほどの軽さはありませんが、マトンほど香りが強くなりすぎず、程よいコクと食べごたえがあります。
このためホゲットは、羊肉に慣れてきて一歩先の味を試したい人に向きます。また、ラムとマトンで悩んだときに「中間」を選べる存在としても役立ちます。ただし、ホゲットは流通量が少なく、スーパーなどでは見かけにくい場合があります。
ホゲット(Hogget):ラム(生後1年未満)とマトン(生後2年以上)の間に分類される、生後1年から2年未満の羊肉を指します。
ラムとマトンの選び方

スーパーなどで羊肉を選ぶ際、「ラム」なのか「マトン」なのかを見分けることは、美味しく料理するための最初の重要なステップです。羊肉を選ぶ際は、まずパッケージの表記を確認し、次に肉の色や状態をチェックすることで、自分の好みや用途に合った最高のお肉を見つけることができます。
パックの表記で見分ける

ラムかマトンかを最も確実に見分ける方法は、お肉が入っているパッケージに記載されている商品名や原材料名の表記を確認することです。
スーパーや精肉店では、食品表示のルールにしたがって商品名や原材料名をラベルに記載します。羊肉であれば、年齢区分に応じて「ラム」「マトン」などの名称を使う決まりがあります。消費者は中身を直接見て年齢を判断できないため、ラベル表示が大切な手がかりになります。
輸入羊肉の場合も、輸出国の基準にしたがって屠畜時の年齢や歯の状態から分類した名称が使われています。スーパーで買うときにまず見るべき情報は、商品名にある「ラム」か「マトン」かという点です。
肉色(脂の色)や肉質、ドリップで見分ける

鮮度を確認したい場合は、赤身の色、脂の色と厚み、パック内のドリップの量や色をチェックします。ラムは明るい赤色で脂が白く、マトンは赤身が濃く脂がやや黄みがかって見える傾向があります。
羊は年齢が上がるほど筋肉が発達し、赤身の色が濃くなります。若いラムの赤身は明るくてやわらかそうな色合いになりやすく、大人のマトンは落ち着いた濃い赤色に近づきます。脂も年齢とともに成分が変わり、ラムはさらっとした白い脂、マトンは厚みが増して少し黄みがかることがあります。
ドリップの状態も目安になります。ドリップが少なく透明に近いものは、扱いが丁寧で鮮度が保たれている可能性が高いと考えられます。逆に、パックの底に濃い赤い液がたくさんたまっている場合は、水分が多く抜けており、風味が落ちていることがあります。
産地・飼育方法で味がかわる?

ラムとマトンの味の違いは年齢が最も大きいですが、どの国のどの地域で、どのような餌(牧草か穀物か)を与えられて育ったかという「産地・飼育方法」によっても、その風味は大きく変わります。
ニュージーランドやオーストラリアなど広大な牧草地で育った羊は、牧草由来の香りを持ちやすく、グラス臭を感じやすい傾向があります。一方、国内産(北海道など)のラムは、穀物飼料を多く使うなど飼育方法に工夫が凝らされ、クセの少ない肉質になっていることが多いです。
穀物を主体に育てられた羊は、脂肪に臭みの原因となる成分が蓄積されにくく、肉質も柔らかくなります。牧草主体で育てられた羊は、より自然な風味と独特の旨味を持ちます。 つまり、「どこで、何を食べて育ったか」という違いが、羊肉の風味の個性をさらに深めているのです。
ラムとマトンはどっちが手に入りやすい?
現在、日本のスーパーや精肉店で一般的に手に入りやすいのは、「ラム肉」です。マトン肉は、専門店や特定の地域を除くと、探すのが難しい場合があります。
日本の市場では、羊肉といえばまずラムが主流です。ラムはクセが少なく調理しやすいため、家庭向けの商品として扱いやすい利点があります。
マトンは香りやコクが強く、好みが分かれる肉です。そのぶん取り扱い店舗は限られやすく、ジンギスカン専門店や焼肉店、羊肉専門店などで使われることが多くなります。マトンを家庭用として購入したい場合は、専門店やネット通販のほうが選択肢が豊富です。
ラムとマトンの違いがすぐ理解できる:まとめ
この記事ではラムとマトンの違いを、初めて羊肉に触れる人でも分かりやすいように整理して紹介してきました。見た目はよく似ていますが、年齢、肉質、香り、味わい、向いている料理などは大きく異なります。
この違いを知ることで、買い物で迷う時間が減り、作りたい料理にぴったり合う羊肉を選びやすくなります。食べ比べる楽しさや、料理に合わせて使い分ける面白さも広がります。最後に、特に覚えておきたいポイントをまとめます。
- 定義の最大の違いは「年齢」
- ラム(Lamb):生後1年未満の若い羊の肉。
- マトン(Mutton):生後2年以上の成羊の肉。
- 肉質と食感の違い
- ラムは筋繊維が細く、水分が豊富で非常に柔らかくジューシー。
- マトンは繊維が太く、しっかりとした歯ごたえと濃厚な旨味がある。
- 風味(クセ)の違い
- ラムは臭みの原因となる脂肪酸の蓄積が少なく、クセがほとんどないマイルドな味わい。羊肉初心者におすすめ。
- マトンは脂肪に強い風味成分が蓄積されており、独特の香りと深いコクがある。羊肉好きにはたまらない個性。
- 料理との相性の違い
- ラムは焼肉、ステーキ、ローストなど、短時間で火を通し、肉の柔らかさを活かす料理に適している。
- マトンはカレー、シチュー、煮込み料理など、濃厚な旨味を活かし、長時間煮込んで柔らかくする料理に適している。
- 選び方のコツ
パックの表記で「ラム」を選ぶのはもちろん、肉の色が明るいピンクで、脂が白いものを選ぶと、より良質なラム肉を見分けられる。
結局、ラムとマトン、どちらを選ぶべきかという問いに答えはありません。あなたのその日の気分や、作りたい料理によって正解が変わります。
| 選ぶ基準 | おすすめの羊肉 | 期待できる料理の仕上がり |
|---|---|---|
| 食べやすさ重視 | ラム | 柔らかく、誰でも美味しく食べられる味 |
| コクと個性重視 | マトン | 深い旨味のある濃厚な味 |
| 両方の良いとこ取り | ホゲット | ラムの柔らかさとマトンのコクを併せ持つ味 |
ラムもマトンも、それぞれにしかない魅力があります。軽く食べたい日にはラムを選び、濃厚な味を楽しみたい日にはマトンを選ぶなど、気分や料理によって使い分けると食卓が豊かになります。中間の味わいを求めるならホゲットという選択肢もあります。
また、国産羊肉は餌や飼育環境の管理が丁寧なため、グラス臭が控えめで家庭でも扱いやすいという魅力があります。
羊肉は正しく選び、適した調理法を使えば驚くほど美味しく味わえる食材です。今回の記事が、「どっちを選べばいいの?」という迷いを解消し、ラムやマトンをもっと気軽に楽しむきっかけになれば嬉しいです

