スーパーの鮮魚コーナーで「イワシ」と「アジ」を目の前にして、ふと手が止まってしまったことはありませんか?どちらも馴染み深い青魚ですが、いざ献立を決めようとすると「結局、何が違うんだっけ?」と迷ってしまうものです。

「今日のメインにするならどっち?」「下処理が楽な方は?」といった、素朴な疑問は、実は多くの人が抱えています。

「イワシとアジの違い」をよくわからない人が持つ悩みや疑問は以下の様なことが多いです。

  • イワシとアジは、どこを見れば見分けられるのか分からない
  • イワシとアジは味や脂の感じ方がどう違うのか知りたい
  • イワシとアジはどんな料理に向くのか、献立で迷ってしまう
  • イワシは下処理が簡単と聞くが、本当に初心者でも扱えるのか不安
  • 子どもが食べやすいのはイワシとアジのどちらなのか知りたい

この記事では、魚の分類といった基本から、見た目での確実な見分け方、そして料理の仕上がりを左右する味や食感の違いまで、どこよりも分かりやすく丁寧に解説します。

イワシとアジの違いを比較

イワシとアジの違いを比較

一般的に、スーパーや家庭料理で「イワシ」「アジ」と呼ぶ場合は、「マイワシ」と「マアジ」を指すことが多いため、この記事でもマイワシとマアジを中心に比較します。なお、イワシ類にはカタクチイワシやウルメイワシなどもあります。

イワシとアジは、どちらも食卓で身近な青魚ですが、同じ魚の仲間というわけではありません。見た目や味、身の質、下処理の方法、向いている料理などに違いがあります。

イワシとアジの違いについて最初に全体的な違いをつかんでおくと、スーパーで魚を選ぶときや料理を決めるときにも迷いにくくなります。

イワシとアジの違いがひと目でわかる比較表

イワシとアジの違いがひと目でわかる比較表

イワシとアジの違いを簡単にまとめると、マイワシは細長い体とやわらかな身が特徴で、マアジは「ぜいご」と呼ばれる硬い部分があり、身にはほどよい弾力があります。

味や向いている料理にも違いがあるため、「どちらを買っても同じ」ではなく、それぞれの特徴を知って選ぶと料理に使いやすくなります。

比較するポイントマイワシマアジ
魚の分類ニシン科アジ科
体型比較的細長いマイワシより体高がある
見分けるポイント体側の黒い斑点が見られる場合がある尾に向かって「ぜいご」がある
身の特徴やわらかめ適度な弾力がある
味わい脂のコクや青魚らしい風味を感じやすいうま味があり比較的すっきりしている
下処理手開きにしやすいぜいごを取り、三枚おろしにすることが多い
向いている料理の例梅煮、蒲焼き、つみれなどアジフライ、南蛮漬け、なめろうなど
両方で楽しめる料理刺身、塩焼きなど刺身、塩焼きなど

表を見ると、マイワシとマアジには「魚の名前が違う」というだけではなく、家庭で料理するときにも分かりやすい違いがあることが分かります。

たとえば、やわらかい身を生かして梅煮やつみれを作りたいときはマイワシが候補になります。一方、アジフライのように身の形を残して調理したい場合は、マアジを選ぶ方法があります。

ただし、魚の味や脂ののり方、身の状態は、サイズや季節、産地などによって変わります。表は「どちらが優れているか」を決めるものではなく、買い物や料理で迷ったときの目安として考えてください。

見た目、味、旬、栄養、料理での使い分けについては、このあとそれぞれの見出しで詳しく解説します。この段階では「マイワシとマアジは似ているようで、特徴や使い方には違いがある」と覚えておいてください。

青魚」は、生物学上の正式な分類名ではありません。一般には、背中が青みを帯びたアジ、イワシ、サバなどの魚をまとめて呼ぶときに使われる言葉です。

イワシとアジは魚の種類・分類も異なる

イワシとアジは魚の種類・分類も異なる

マイワシとマアジは、どちらも青魚として扱われることがありますが、生物として見ると別のグループに分けられる魚です。マイワシはニシン科、マアジはアジ科に分類されています。

農林水産省が公開している魚類の一覧でも、マイワシは「ニシン科」、マアジは「アジ科」として別々に掲載されています。分類まで覚える必要はありませんが、「イワシとアジは名前が違うだけの似た魚ではない」と知っておくと、それぞれの特徴を理解しやすくなります。

主にこの記事で扱う種類
イワシマイワシニシン科
アジマアジアジ科

また、「イワシ」という名前はマイワシだけを指すとは限りません。日本で「イワシ類」として扱われる魚には、マイワシのほかにカタクチイワシやウルメイワシなどがあります。

料理の記事で細かな分類まで覚える必要はありません。スーパーでよく使われる名前だけを見ていると「イワシは1種類」と思いやすいため、この記事では話が分かりにくくならないよう、イワシ側は「マイワシ」、アジ側は「マアジ」を基本として比較していきます。

たとえば、同じ「イワシ」という名前が付いていても、マイワシとカタクチイワシは同じ魚ではありません。そのため、旬や大きさ、料理への使い方などを説明するときに「イワシは必ずこうなる」とひとまとめにすると、実際の特徴と合わなくなる場合があります。

水産庁でもマイワシ、カタクチイワシ、ウルメイワシを分けて扱っています。記事の中で魚種を明確にする理由は、難しい分類を覚えてもらうためではなく、味や旬などをできるだけ正確に比較するためです。

イワシとアジの違いを知るときは、「この記事ではマイワシとマアジを比べている」と理解しておけば問題ありません。魚の種類を最初に整理しておくことで、このあと紹介する見た目や味、旬などの違いも混乱せずに読み進めやすくなります。

イワシとアジの見た目と見分け方

イワシとアジの見た目と見分け方

マイワシとマアジを見分けるときは、魚の大きさだけで判断するよりも、「体型」「体側の模様」「ぜいご」の3点を順番に確認する方法が分かりやすいです。

特にマアジの「ぜいご」は見分けるときの有力な目印になります。スーパーで丸ごとの魚を見ても迷わないよう、それぞれの特徴を順番に確認していきましょう。

体型や大きさで見分ける

体型や大きさで見分ける

マイワシとマアジは、横から見たときの体型に違いがあります。マイワシは全体的に細長く見えやすく、マアジはマイワシと比べると体の中央部分に高さがあり、横から見た輪郭にも違いが感じられます。

ただし、大きさだけでイワシとアジを判断する方法はおすすめできません。 マイワシにもマアジにも小さな魚と大きな魚があり、成長段階や漁獲される時期によって店頭に並ぶサイズが変わるからです。

見分けるときのポイントを簡単に整理すると、次のようになります。

確認する部分マイワシマアジ
全体の印象細長く見えやすい体の中央に高さを感じやすい
横から見た形なだらかな細長い形上下方向にも幅がある
大きさ小型から成魚までさまざま豆アジ、小アジ、大型のマアジまでさまざま
見分けるときの重要度体型は目安になる体型は目安になる
大きさだけで判断難しい難しい

実際に市場へ出る魚の大きさにも幅があります。三重県水産研究所の「魚種紹介(マイワシ)」では、熊野灘や伊勢湾で漁獲されるマイワシについて、時期や年齢によって15cm前後から20cmを超える魚まで見られることが紹介されています。

マアジについても同様です。三重県水産研究所の「魚種紹介(マアジ)」では、15cm程度の若い魚から20~25cm程度の魚、時期によっては30cm程度の大型魚も漁獲されるとしています。つまり、「小さいからイワシ、大きいからアジ」と単純に分けることはできません。

スーパーで丸ごとの魚が並んでいたら、最初に全体の形を見てください。そのうえで、次に紹介する体側の模様や「ぜいご」を確認すると、見分けやすくなります。

体型は最初の手がかり、大きさは参考程度と覚えておくと分かりやすいでしょう。

体の色や模様で見分ける

体の色や模様で見分ける

体の模様を見る場合は、マイワシの体側に並ぶ黒い点が分かりやすい目印になります。

宮城県の「南三陸のさかな図鑑-マイワシ」では、マイワシの特徴として体側に1~3列の黒点があることが紹介されています。三重県水産研究所も、マイワシには体側に黒点が並ぶと説明しています。

横から見たときは、次の順番で確認すると迷いにくくなります。

  1. 背中からお腹まで全体を見る
  2. 体の中央付近に黒い点が並んでいないか確認する
  3. 黒点だけで決めず、体型も確認する
  4. 最後に尾の近くに「ぜいご」があるかを見る

マイワシの黒点は「七つ星」と呼ばれることもありますが、必ず7個並ぶという意味ではありません。黒点の数や見え方だけを数えて判断するより、「体側に黒い点が並んでいる」という特徴として覚えるほうが実用的です。

見るポイントマイワシマアジ
体側の黒点並んで見られるのが特徴マイワシを見分けるような黒点を目印にはしない
模様での見分けやすさ比較的分かりやすい模様より「ぜいご」が分かりやすい
確認方法黒点+体型を見るぜいご+体型を見る

ただし、魚の色合いは、照明や魚の状態によって見え方が変わる場合があります。店頭で判断するときは、「銀色だからイワシ」「黄色っぽいからアジ」のように色だけで決めないほうが迷いません。

マイワシなら体側に並ぶ黒点を確認し、マアジなら次に説明するぜいごを見る方法が分かりやすいです。複数の特徴を組み合わせると、見た目だけでも違いを判断しやすくなります。

体側(たいそく)」とは、魚を横から見たときに見える体の側面です。スーパーで魚が横向きに並んでいる場合、目から尾にかけて見えている広い部分が体側にあたります。

アジの「ぜいご」が分かりやすい見分け方

アジの「ぜいご」が分かりやすい見分け方

マイワシとマアジのどちらなのか迷ったときは、マアジの体側から尾にかけてある「ぜいご」を確認すると見分けやすくなります。

ぜいごは普通のやわらかなうろこと違い、触ると硬く感じる部分です。尾の付け根だけを見るのではなく、魚の横側に沿って目を動かすと見つけやすくなります。

鳥取県水産試験場の「右体側の『ゼイゴ』がないマアジ」では、ぜいごを「側線上にならぶ硬くて突起のある鱗」と説明しています。三重県水産研究所でも、マアジでは「稜鱗」と呼ばれる鋭い鱗が側線を覆うことを特徴として挙げています。

  • 魚を横から見る
  • 体の中央付近から尾の方向を見る
  • 尾に向かって硬そうな線状の部分が続いているか確認する
  • ぜいごが確認できれば、マアジを見分ける大きな手がかりになる

たとえば、鮮魚コーナーでマイワシとマアジが隣に並んでいたとします。マイワシには体側の黒点が目立ちやすいのに対し、マアジでは尾へ向かって続く硬いぜいごを確認できます。

見分け方を順番にすると、より簡単です。

確認する場所見分ける目安
全体の形細長いか、体に高さがあるか
体の側面マイワシらしい黒点があるか
尾に向かう部分マアジのぜいごがあるか

ただし、「ぜいごがある魚はすべてマアジ」と覚えるのは正確ではありません。ぜいごにあたる硬い鱗はマアジだけに見られる特徴ではなく、魚を詳しく分類するとアジ科のほかの魚などでも確認されます。

この記事で比べているマイワシとマアジの二択で考える場合、ぜいごは非常に分かりやすい見分け方のひとつと考えてください。

料理をするときには、ぜいごが見分け方だけでなく下処理にも関係します。ぜいごの取り方については、後ほど「イワシとアジの下処理・さばき方の違い」で詳しく説明するため、ここでは「マアジを見分ける目印」と覚えておけば十分です。

ぜいご」は「ぜんご」とも呼ばれる、マアジの体側に沿って並ぶ硬い鱗です。魚の専門的な呼び方では「稜鱗(りょうりん)」といいます。

側線(そくせん)」とは、魚の体の左右にある線のような器官です。水の流れや振動などを感じ取る働きがあります。マアジのぜいごは側線に沿って並んでいるため、魚を横から見ると位置を確認しやすくなります。

イワシとアジの味・食感の違い

イワシとアジの味・食感の違い

マイワシとマアジは、どちらもうま味のある身近な青魚ですが、食べたときの印象には違いがあります。マイワシは脂のコクと青魚らしい風味を感じやすく、マアジはうま味がありながら比較的すっきりした味わいが特徴です。

食感にも違いがあり、マイワシはやわらかく口ほどけのよい身、マアジは適度な弾力を感じやすい身と考えると分かりやすいでしょう。ただし、味や脂ののりは季節、産地、大きさなどによって変わるため、魚種だけで決まるものではありません。

イワシは脂のコクや青魚らしい風味を感じやすい

イワシは脂のコクや青魚らしい風味を感じやすい

マイワシは、脂がのったものほど濃厚なコクを感じやすく、青魚らしい風味もしっかり楽しめる魚です。あっさりした白身魚とは異なり、口に入れたときに魚の味がはっきり感じられる傾向があります。

脂が味の印象に関係することは、食品成分からも読み取れます。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」マイワシ・生では、可食部100g当たりの脂質は9.2gです。一方、同じ成分表のマアジ・皮つき・生は4.5gとなっており、収載された試料ではマイワシのほうが脂質が多くなっています。

ただし、「マイワシならいつでも脂が多い」と考えるのは適切ではありません。文部科学省の食品成分表でも、魚介類は同じ魚種であっても、漁場、漁期、魚の大きさ、成熟度などによって成分値が変わると説明されています。

味の違いを料理の感覚に置き換えると、次のように考えると分かりやすくなります。

マイワシを食べたときの印象感じやすい特徴
味の濃さ魚の風味をしっかり感じやすい
脂がのったものはコクを感じやすい
香り青魚らしい香りを感じやすい
後味脂のうま味や余韻が残りやすい

たとえば、マイワシを塩焼きにすると、加熱された脂と身の風味が合わさり、魚らしい味をしっかり楽しめます。しょうがや梅干しを使った煮物と相性がよいのも、マイワシの存在感のある風味を生かしながら食べやすく仕上げられるためです。

農林水産省の「うちの郷土料理・千葉県」でも、銚子で6~7月ごろに水揚げされる「入梅イワシ」は脂がのり、刺身をはじめ塩焼きや煮付けなどに利用されることが紹介されています。

マイワシの味をひと言で表すなら、「脂のコクと青魚らしい風味を楽しみやすい魚」と考えるとよいでしょう。魚らしい味を楽しみたい人や、しょうゆ、みそ、梅などを使った味付けを楽しみたいときにも選びやすい魚です。

アジはうま味があり比較的すっきりした味わい

アジはうま味があり比較的すっきりした味わい

マアジは、魚のうま味を感じながらも、マイワシと比べると比較的すっきりした味わいを楽しみやすい魚です。青魚らしい風味はありますが、脂の濃厚さだけが前に出るというより、身そのものの味を感じやすいのが特徴といえます。

文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」マアジ・皮つき・生を見ると、可食部100g当たりの脂質は4.5gです。マイワシの9.2gより少ない数値ですが、魚の味は脂質量だけで決まるわけではないため、「アジは脂がない魚」という意味ではありません。

マイワシとマアジの違いを次のように考えるとイメージしやすいでしょう。

比較マイワシマアジ
味の印象コクを感じやすい比較的すっきり
青魚らしい風味しっかり感じやすいほどよく感じやすい
脂の存在感強く感じる場合があるマイワシより控えめに感じやすい
身の味脂と風味を含めて楽しみやすい身のうま味を感じやすい

たとえば、マアジを刺身で食べると、脂だけではなく身のうま味やほどよい歯ごたえを感じやすくなります。塩焼きでは身そのものの風味を楽しめ、アジフライでは衣の香ばしさと魚のうま味を合わせやすいでしょう。

「青魚は味が濃そうで食べにくい」と感じる人でも、マアジなら比較的取り入れやすい場合があります。ただし、味の感じ方には個人差があり、マアジでも脂ののった個体はコクを強く感じることがあります。

マアジは「さっぱりして味が薄い魚」ではありません。マイワシと比較した場合に、脂の存在感がやや控えめで、身のうま味をバランスよく感じやすい魚と考えると、両者の違いをつかみやすくなります。

身のやわらかさや食感にも違いがある

身のやわらかさや食感にも違いがある

マイワシとマアジは味だけでなく、噛んだときの食感にも違いがあります。一般的には、マイワシは身がやわらかくほぐれやすいのに対し、マアジは身に適度な弾力があり、噛んだときの食感を感じやすい魚です。

イワシはふんわり・やわらかめ」「アジはほどよく締まった食感」と覚えておくと、料理を選ぶときにも役立ちます。

食感の違いマイワシマアジ
身の印象やわらかめ適度な弾力がある
口の中での感じ方ほぐれやすい身の存在感を感じやすい
加熱したときふっくら仕上げやすい形を残して仕上げやすい
食感を生かしやすい料理煮物、つみれなどフライ、南蛮漬けなど

マイワシは身がやわらかいため、煮物にすると身がほぐれやすく、つみれにすればなめらかな食感に仕上げやすくなります。一方、マアジは身にほどよい弾力があるため、フライや南蛮漬けのように魚の形を生かす料理にも使いやすい魚です。

ただし、食感は魚種だけで決まりません。魚の鮮度、大きさ、脂ののり方、切り方、加熱時間などによっても変化します。刺身と焼き魚でも食感は大きく異なるため、「イワシは必ずやわらかい」「アジは必ず硬い」と決めつけないことが大切です。

味と食感をまとめると、マイワシは「脂のコクとやわらかな身」、マアジは「比較的すっきりしたうま味と適度な弾力」が分かりやすい違いになります。

どちらがおいしいかは好みや料理によって変わります。濃厚な魚の風味を楽しみたいならマイワシ、身のうま味と食感のバランスを楽しみたいならマアジというように選ぶと、毎日の料理でも使い分けやすくなるでしょう。

イワシとアジの旬の違い

イワシとアジの旬の違い

マイワシとマアジは一年を通して流通していますが、おいしさの目安となる時期には違いがあります。マイワシは初夏から秋にかけて脂がのったものが出回りやすく、特に6〜7月の「入梅イワシ」がよく知られています。

一方、マアジの旬は地域による幅が大きく、春から夏を旬とする地域もあれば、夏から秋がおいしいとされる地域もあります。「イワシは○月、アジは○月」と全国一律に覚えるより、魚の種類と産地を一緒に見るほうが分かりやすいでしょう。

マイワシのおいしい時期

マイワシのおいしい時期

マイワシは、初夏から秋にかけておいしい時期を迎える地域があり、特に6〜7月ごろは脂ののったマイワシを楽しみやすい時期のひとつです。

千葉県の「さかな特別料理バラエティ-いわし-」では、マイワシの旬を夏から秋とし、入梅のころに脂がのっておいしくなると紹介しています。農林水産省の「うちの郷土料理・千葉県」でも、銚子で6〜7月の梅雨どきに水揚げされるマイワシを「入梅イワシ」と呼び、1年で特に脂がのる時期として取り上げています。

料理初心者の場合は、次のように覚えておくと分かりやすいでしょう。

時期の目安マイワシの特徴
6〜7月ごろ「入梅イワシ」と呼ばれるものがあり、脂のりのよさで知られる
夏〜秋旬として紹介される地域がある
秋ごろ北海道など、脂を蓄えたマイワシが漁獲される地域もある
その他の時期流通することはあるため、旬以外は食べられないわけではない

「入梅イワシ」は、全国すべてのマイワシが6〜7月に最もおいしくなるという意味ではありません。銚子や三陸などでは梅雨どきのマイワシが脂のりのよい魚として知られていますが、北海道の釧路では秋に来遊するマイワシも脂を蓄えた魚として紹介されています。

たとえば、千葉県銚子産のマイワシを初夏に見かけた場合は、入梅イワシの時期と重なっている可能性があります。一方、北海道産なら秋に脂ののったマイワシが出回る場合もあるため、月だけでなく産地を見ることが大切になります。

マイワシのおいしい時期を覚えるなら、「初夏の入梅イワシが代表的。ただし、産地によって秋にも脂ののったマイワシがある」と考えると分かりやすいでしょう。

種類や産地による時期の違いまで知りたい方は、イワシの旬の時期とおいしい季節も参考にしてください。

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入梅イワシ(にゅうばいいわし)」は、6〜7月ごろの梅雨の時期に水揚げされ、脂のりのよさで知られるマイワシの呼び名です。特に千葉県の銚子などでよく知られています。

マアジのおいしい時期

マアジのおいしい時期

マアジは、春から夏に旬を迎える地域がある一方、夏から秋がおいしいとされる地域もあり、マイワシ以上に産地を意識して考えたい魚です。

神奈川県の「かながわの漁業・さかな」では、相模湾沿岸で水揚げされるアジの旬を3〜8月としています。一方、静岡県水産・海洋技術研究所の「旬の魚」では、マアジは夏から秋にかけてがおいしいと紹介されています。

地域別の例を見ると、旬に幅があることが分かります。

地域・産地の例おいしい時期の目安
神奈川県・相模湾沿岸3〜8月
静岡県夏〜秋
宮城県・三陸沖8月ごろに脂ののったマアジが紹介されている

宮城県の「みやぎ水産の日・8月のオススメはアジ」では、8月ごろの三陸沖のマアジについて、暖流に乗って北上し、豊富な餌を食べて丸々と太った魚がおいしい時期を迎えると紹介しています。

マアジは日本の広い海域に生息しており、魚が移動する時期や漁場が地域によって異なります。そのため、「マアジの旬は5月だけ」「夏だけ」とひとつの月に決めてしまうと、地域ごとのおいしい時期を見落としてしまいます。

スーパーでマアジを選ぶ場合は、単にカレンダーを見るより、産地と時期をセットで確認するのがおすすめです。たとえば、春から夏なら相模湾周辺、夏から秋なら静岡や三陸など、それぞれの地域で旬として扱われるマアジがあります。

マアジのおいしい時期は、全国共通のひとつの月に決めるより、「春から秋にかけて地域ごとに旬が移っていく」くらいに考えると理解しやすくなります。

アジは産地によって旬の時期が少し前後するため、時期だけでなく鮮度や脂ののりも確認することが大切です。詳しくは、アジの旬の時期とおいしいアジの選び方で紹介しています。

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回遊(かいゆう)」とは、魚が餌を求めたり、成長したり、産卵したりするために海の中を季節的に移動することです。マアジやマイワシも広い海域を移動するため、水揚げされる時期や場所に違いが生まれます。

旬は産地や漁獲される地域によって異なる

旬は産地や漁獲される地域によって異なる

マイワシとマアジの旬を知るうえで最も大切なのは、旬は全国どこでも同じ時期になるわけではないという点です。

日本の海は南北に長く、水温や海流、餌となる生き物の状況などが地域によって異なります。マイワシやマアジは海の中を移動する魚なので、同じ魚種でも「どこで、いつ漁獲されたか」によって脂ののり方や水揚げの時期が変わります。

公的機関が紹介している旬だけを比べても、地域差ははっきりしています。

地域おいしい時期の例
マイワシ千葉県・銚子6〜7月の入梅どき
マイワシ宮城県6月ごろから秋まで
マイワシ北海道・釧路秋に脂を蓄えた魚が来遊
マアジ神奈川県3〜8月
マアジ静岡県夏〜秋
マアジ宮城県・三陸沖8月ごろ

同じマイワシでも、銚子では6〜7月の入梅イワシが有名なのに対し、釧路沖では秋にプランクトンを食べて脂を蓄えたマイワシが漁獲されています。マアジでも神奈川県は3〜8月、静岡県は夏から秋とされており、ひとつの旬に当てはめるのは難しいことが分かります。

スーパーで旬の魚を選ぶ場合、細かな回遊ルートまで覚える必要はありません。次の3点を確認するだけでも選びやすくなります。

  • 魚の名前だけでなく「産地」を見る
  • 店頭で「旬」「今がおすすめ」などの表示があれば参考にする
  • 月だけで「旬ではない」と決めつけない

「旬=全国共通の決まった月」と覚えるより、産地ごとにおいしい時期が少しずつ違うと理解しておくことが大切です。

マイワシは初夏の入梅イワシが代表的ですが、北の海では秋にも脂ののった魚が見られます。マアジも春から夏を中心にしながら、地域によっては夏から秋がおいしい時期となります。スーパーで選ぶときは、「何月だから」だけではなく、「どこの海で獲れた魚なのか」にも目を向けてみてください。

魚の「旬」には、「多く水揚げされて手に入りやすい時期」と「脂がのるなど、おいしさが高まりやすい時期」という意味が重なる場合があります。必ずしも水揚げ量が最も多い時期と、最もおいしい時期が完全に一致するわけではないため、この記事では主に「おいしく食べやすい時期」という意味で旬を紹介しています。

イワシとアジの栄養の違い

イワシとアジの栄養の違い

マイワシとマアジは、どちらもたんぱく質やDHA・EPAなどを含む魚ですが、栄養成分の量は同じではありません。文部科学省の食品成分表で生の魚100g当たりを比べると、マイワシは脂質やDHA・EPA、ビタミンDなどが多く、マアジはマイワシより脂質が少ないという違いがあります。

ただし、栄養成分だけを見て「イワシのほうが健康によい」「アジのほうが優れている」と判断する必要はありません。魚の成分は漁獲された場所や時期、大きさなどによって変わるため、食品成分表の数値は比較するときの目安として見ることが大切です。

イワシとアジはどちらもDHA・EPAを含む青魚

マイワシとマアジには、どちらにもDHAとEPAが含まれています。DHAとEPAは魚の脂質に含まれる脂肪酸の一種で、マイワシだけ、あるいはマアジだけに含まれる成分ではありません。

文部科学省の「食品成分データベース・まいわし/生」「食品成分データベース・まあじ/皮つき/生」では、生の可食部100g当たりに次の量が収載されています。

脂肪酸(生・可食部100g当たり)マイワシマアジ
DHA870mg570mg
EPA780mg300mg
n-3系多価不飽和脂肪酸2.10g1.05g

食品成分表の数値で比較すると、収載されている試料ではDHA・EPAともにマイワシのほうが多くなっています。マイワシは脂質そのものも100g当たり9.2g、マアジは4.5gとなっており、魚に含まれる脂の量の違いもDHA・EPAの数値に関係しています。

料理初心者なら、「青魚だからDHA・EPAがある」というところまで理解したうえで、次のように考えると分かりやすいでしょう。

  • マイワシにもDHA・EPAが含まれている
  • マアジにもDHA・EPAが含まれている
  • 食品成分表の100g比較ではマイワシの数値が高い
  • 実際の含有量は季節や魚の状態によって変わる

文部科学省の食品成分データベースでは、同じ魚種であっても漁場、漁期、魚体の大きさ、成熟度などによって成分値が変動し、個体差もあると説明されています。そのため、スーパーで買ったマイワシ1尾に必ずDHAが870mg含まれるという意味ではありません。

DHA・EPAの量だけを基準に魚を選ぶより、味や料理との相性も含めてマイワシとマアジを使い分けると、毎日の献立に取り入れやすくなります。栄養面では、どちらもDHA・EPAを含む魚であり、食品成分表では含まれる量に違いがあると理解しておけば十分でしょう。

DHAは「ドコサヘキサエン酸」の略称で、n-3系多価不飽和脂肪酸に分類される脂肪酸です。文部科学省の脂肪酸成分表では、マイワシとマアジの両方に含有量が掲載されています。

EPAは「イコサペンタエン酸」の略称として一般的に使われています。DHAと同じくn-3系多価不飽和脂肪酸の仲間で、マイワシとマアジの両方に含まれています。

イワシとアジの主な栄養成分を比較

イワシとアジの主な栄養成分を比較

マイワシとマアジは、たんぱく質の量は比較的近い一方、脂質や一部のビタミン・ミネラルには違いがあります。栄養成分を比べるときは、「どちらが上か」を決めるのではなく、それぞれにどのような特徴があるのかを見ることが大切です。

文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに、生のマイワシと皮つきの生マアジ100g当たりを比較すると、主な成分は次のようになります。

主な栄養成分(生・可食部100g当たり)マイワシマアジ
エネルギー156kcal112kcal
たんぱく質19.2g19.7g
脂質9.2g4.5g
カルシウム74mg66mg
2.1mg0.6mg
ビタミンD32.0μg8.9μg
ビタミンB1216.0μg7.1μg
DHA870mg570mg
EPA780mg300mg

マイワシとマアジのたんぱく質は、100g当たりでは19.2gと19.7gで大きな差はありません。一方、脂質はマイワシ9.2g、マアジ4.5gとなっており、マイワシのほうが多い数値になっています。

ビタミンDやビタミンB12、鉄についても、食品成分表に収載された試料ではマイワシの数値が高くなっています。ただし、栄養素は一つだけを取り出して食品の優劣を決めるものではありません。マアジにもたんぱく質、DHA・EPA、ビタミンやミネラルなど複数の栄養成分が含まれています。

料理を選ぶ場面では、栄養成分だけでなく味や脂の量も一緒に考えると実用的です。

選ぶときの見方マイワシマアジ
たんぱく質マアジと近い量マイワシと近い量
脂質多めマイワシより少なめ
DHA・EPA食品成分表では多め含まれている
ビタミンD食品成分表では多め含まれている
味との関係脂のコクを感じやすい比較的すっきりした味わい

たとえば、マイワシの脂質が多いという特徴は、前の見出しで紹介した「脂のコクを感じやすい」という味の違いともつながります。マアジは脂質が比較的少ないものの、たんぱく質量はマイワシとほぼ同程度なので、「脂質が少ない=栄養が少ない」と考える必要はありません。

また、文部科学省の食品成分データベースでは、魚介類の成分は漁獲場所、漁期、魚の大きさ、生理状態などによって変わると注意されています。表の数字は、市販されているすべてのマイワシやマアジにそのまま当てはまる固定値ではありません。

栄養の違いを簡単にまとめると、マイワシとマアジはたんぱく質量が比較的近く、脂質やDHA・EPA、ビタミンDなどの量には差があります。 健康面の優劣を決めるのではなく、どちらも日々の料理に使える魚として、味や料理との相性に合わせて選ぶとよいでしょう。

μg(マイクログラム)」は重さを表す単位で、1μgは100万分の1gです。ビタミンDやビタミンB12のように、食品中に少量含まれる成分を表すときによく使われます。

料理ではイワシとアジをどう使い分ける?

料理ではイワシとアジをどう使い分ける?

イワシとアジは、どちらも焼く・煮る・揚げる・生で食べるといった幅広い料理に使えますが、身のやわらかさや脂の感じ方が少し異なります。イワシはやわらかな身とコクを生かす料理、アジはほどよい弾力とうま味を生かす料理に向いています。

ただし、「イワシは煮物だけ」「アジはフライだけ」と決まっているわけではありません。料理初心者は、魚の特徴と料理の仕上がりを組み合わせて考えると、使い分けやすくなります。

イワシに向いている料理

イワシに向いている料理

イワシは、身のやわらかさと脂のコクを生かせる料理に向いています。しっかりした味付けとも合わせやすいため、魚の風味を楽しみながら食べたいときにも選びやすい魚です。

イワシは身がやわらかく、加熱するとほぐれやすい特徴があります。前の見出しで紹介したように、マイワシは脂のコクや青魚らしい風味を感じやすいため、しょうゆ、みそ、しょうが、梅干しなどを使った料理ともなじみやすくなります。

料理ごとの特徴を整理すると、次のようになります。

料理イワシに向いている理由
梅煮梅の酸味や香りと魚の風味を合わせやすい
しょうが煮しょうがの香りを加えて食べやすく仕上げられる
蒲焼き甘辛い味付けと脂のコクを合わせやすい
つみれやわらかな身を細かくして使いやすい
ハンバーグ刻んだ身をまとめて調理しやすい
フライ開いた身を使えば揚げ物にもできる

たとえば、魚料理に慣れていない人がイワシを使うなら、梅煮や蒲焼きは作りやすい料理のひとつです。しょうゆや砂糖などで味を付けるため、イワシ特有の風味を生かしながら、ご飯に合わせやすい味に仕上げられます。

つみれもイワシの特徴を生かしやすい料理です。身を細かくして丸めるため、魚の形をきれいに残す必要がなく、汁物や鍋料理にも取り入れやすくなります。

覚えるなら、「イワシは、やわらかな身を生かす料理や、味をしっかり含ませる料理と相性がよい」と考えると分かりやすいでしょう。煮る、たたく、開いて焼くといった調理法から選ぶと、イワシらしいおいしさを生かしやすくなります。

アジに向いている料理

アジに向いている料理

アジは、身のうま味とほどよい弾力を生かせる料理に向いています。身の形を残して調理しやすいため、見た目を整えたい料理にも使いやすい魚です。

マアジはイワシと比べると身に適度な弾力があり、加熱しても魚らしい食感を感じやすくなります。味も比較的すっきりしているため、揚げ物、酢を使った料理、薬味を合わせる料理など、さまざまな調理法に合わせやすい特徴があります。

料理アジに向いている理由
アジフライ身の厚みと食感を生かしやすい
南蛮漬け揚げた身と甘酢を合わせやすい
なめろう薬味やみそと身のうま味を合わせやすい
さんが焼きなめろうを焼いて香ばしく仕上げられる
ムニエル身の形を残しながら焼きやすい
ソテーシンプルな味付けでも身のうま味を楽しみやすい

定番のアジフライは、マアジの特徴が分かりやすい料理です。衣はサクッと仕上がり、中の身にはほどよい厚みが残るため、揚げ物でも魚の食感を楽しめます。

小さめのアジなら南蛮漬けも選びやすいでしょう。揚げたアジを玉ねぎやにんじんなどと一緒に甘酢へ漬けると、酸味と魚のうま味を一緒に味わえます。

刺身用の新鮮なアジを使う料理では、なめろうも代表的です。アジを細かくたたき、みそやねぎ、しょうがなどと合わせるため、魚のうま味と薬味の香りを楽しめます。

アジを料理で使い分けるなら、「身の形や食感を生かしたい料理に向いている」と考えると選びやすくなります。フライや南蛮漬けのように身を残して仕上げる料理では、マアジの特徴を感じやすいでしょう。

なめろう」は、アジなどの魚を細かくたたき、みそ、ねぎ、しょうがなどの薬味を混ぜて作る料理です。千葉県の郷土料理として知られています。

刺身や塩焼きなど両方楽しめる料理

刺身や塩焼きなど両方楽しめる料理

イワシとアジは、向いている料理に違いがある一方で、刺身や塩焼きのように両方で楽しめる料理もあります。魚の種類だけで料理を決める必要はなく、鮮度や大きさ、好みの味に合わせて選ぶことが大切です。

特にシンプルな料理では、イワシとアジそれぞれの味や食感の違いが分かりやすくなります。食べ比べてみると、「イワシはコクを感じやすい」「アジは身のうま味や食感を楽しみやすい」といった違いもつかみやすくなります。

料理イワシアジ
刺身脂や青魚らしい風味を楽しみやすいうま味とほどよい食感を楽しみやすい
塩焼き脂のコクを感じやすい身の味をすっきり楽しみやすい
フライやわらかい仕上がりになりやすい身の厚みや食感を楽しみやすい
煮付け味がなじみやすい身を残して仕上げやすい
南蛮漬け小ぶりなら使いやすい定番として使いやすい

たとえば、塩焼きならイワシとアジのどちらでも作れます。イワシは脂のコクを感じやすく、アジは身のうま味やほどよい弾力を楽しみやすいため、同じ調理法でも仕上がりの印象が少し変わります。

刺身についても両方楽しめますが、家庭で生食する場合は注意が必要です。刺身として食べるときは、「生食用」「刺身用」などと表示されている商品を選び、消費期限や保存方法などの表示に従ってください。 鮮度が良さそうに見えるという理由だけで、生食できると判断しないことが大切です。

料理初心者が使い分けるときは、次のように考えると迷いにくくなります。

  • しっかりしたコクややわらかさを生かしたいならイワシ
  • 身のうま味や食感を生かしたいならアジ
  • 塩焼きや刺身などシンプルな料理なら両方楽しめる
  • 「絶対にこの魚」と決めず、店頭の状態や好みに合わせて選ぶ

イワシとアジの使い分けに難しい決まりはありません。料理の仕上がりをやわらかくしたいのか、身の食感を残したいのかを考えるだけでも、魚を選びやすくなります。

同じ料理をイワシとアジで作り比べる方法もおすすめです。魚の味や食感の違いを実際に感じると、レシピだけでは分かりにくい「自分が好きな使い分け」も見つけやすくなるでしょう。

イワシとアジの下処理・さばき方の違い

イワシとアジの下処理・さばき方の違い

イワシとアジは、料理を始める前の扱い方にも違いがあります。マイワシは身がやわらかいため、指を使って身を骨から外す「手開き」がしやすく、マアジは硬い「ぜいご」を取り除いてから包丁で三枚おろしにする方法がよく使われます。

ただし、魚の大きさや作る料理によって適したさばき方は変わります。「イワシは手で開きやすい」「アジは包丁を使って身と骨を分けることが多い」という基本から覚えると分かりやすいでしょう。

イワシは手開きしやすい

イワシは手開きしやすい

マイワシは身や骨が比較的やわらかいため、包丁だけで三枚おろしにしなくても、指を使った「手開き」で身を開くことができます。蒲焼きやフライなど、開いた状態で使いたい料理にも便利な方法です。

料理初心者が手開きをするときは、次のような流れをイメージすると分かりやすくなります。

作業ポイント
うろこを落とす表面を傷めないようやさしく扱う
頭と内臓を取り除く丸ごと購入した場合は早めに処理する
腹の中を洗う汚れや血を取り、水気をしっかり拭く
腹側から指を入れる中骨に沿わせるように身を開く
中骨を外す身を崩さないようゆっくり外す
必要な骨を確認する料理に合わせて残った骨を取り除く

手開きのポイントは、力任せに身を引っ張らないことです。イワシは身がやわらかいため、強く押したり引いたりすると身割れしやすくなります。

たとえば、蒲焼きやフライに使う場合は、腹側から左右へ開いて中骨を外すと、一枚の開いた身にできます。つみれなど身を細かくする料理なら、多少形が崩れても仕上がりへの影響は少ないため、魚を初めてさばく人でも挑戦しやすいでしょう。

また、丸ごとの生魚を購入したときは、下処理を長時間後回しにしないことも大切です。農林水産省の「海の幸を安全に楽しむために~アニサキス症の予防~」では、一尾で購入した鮮魚はよく冷やして持ち帰り、速やかに内臓を取り除くよう案内しています。マイワシとマアジはいずれもアニサキスが寄生することのある魚として知られているため、適切な下処理が必要です。

手開きは「包丁を使わないから簡単」というより、やわらかなイワシの身質に合ったさばき方と考えると分かりやすくなります。最初からきれいな形に仕上げようとせず、中骨に指を沿わせながらゆっくり開くことが失敗しにくいポイントです。

手開き」とは、包丁だけで身と骨を切り分けるのではなく、指を使って魚の身を中骨から外して開く方法です。身や骨がやわらかいイワシなどで使われます。

アジはぜいごを取って三枚おろしにする

アジはぜいごを取って三枚おろしにする

マアジはイワシより身がしっかりしているため、切り身として使う場合は、ぜいごや内臓などを取り除いたあと、包丁で三枚おろしにする方法が基本になります。

農林水産省の「うちの郷土料理・魚のたたき/なめろう」でも、アジはぜいご、頭、内臓を取り除いて腹の中を洗い、大きなアジは三枚におろす手順が紹介されています。

家庭でマアジをさばく流れを簡単にすると、次のようになります。

作業ポイント
うろこを落とす表面を軽くなでるように確認する
ぜいごを取る尾側から包丁を寝かせて削ぐように取る
頭と内臓を取り除く腹の中に内臓を残さない
腹の中を洗う洗ったあとは水気をよく拭き取る
中骨に沿って包丁を入れる骨に身を多く残さないよう進める
反対側も切り離す身2枚と中骨1枚に分ける
腹骨などを取り除く作る料理に合わせて仕上げる

「三枚おろし」という名前から、身を3つに切る方法だと思う人もいるかもしれません。実際には、左右の身が2枚と、中央の中骨が1枚の合計3枚に分かれるため、三枚おろしと呼ばれています。

たとえば、アジフライやソテー、なめろうなどに使う場合は、三枚おろしにしておくと料理に合わせた大きさへ切りやすくなります。一方、小さなアジを南蛮漬けにする場合などは、必ず三枚におろす必要はありません。

料理下処理の一例
アジフライ開きや三枚おろしなど料理に合わせて処理
なめろう三枚おろしにして骨などを取り除いてから細かくたたく
ソテー三枚おろしの身を使いやすい
南蛮漬け小アジなら頭や内臓などを処理して丸ごと使う方法もある

アジをさばくときは、「必ず三枚おろし」と覚える必要はありません。大きめのマアジを身だけにして使いたいときは三枚おろし、小さなアジは料理に合わせて処理を変えると考えると実用的です。

また、ぜいごについては前の「見た目と見分け方」で説明したように、マアジを見分ける目印になる硬い部分です。下処理では、食べたときに口に残らないよう、料理に応じて包丁で取り除きます。

マイワシとの違いを簡単にまとめると、マイワシは指を使って身を開きやすく、マアジは包丁を使って身と骨を分けやすいという点です。最初から一尾の魚をさばくことに不安がある場合は、鮮魚売り場で下処理や三枚おろしをお願いできる店舗もあるため、無理に家庭ですべて行う必要はありません。

三枚おろし」は、魚を「右側の身」「左側の身」「中央の中骨」の3枚に分けるさばき方です。フライ、焼き物、刺身など、さまざまな料理の下ごしらえに使われます。

新鮮なイワシとアジの選び方

新鮮なイワシとアジの選び方

新鮮なイワシやアジを選ぶときは、一尾なら「目・表面のつや・腹のハリ・エラ」、刺身や切り身なら「身の色・つや・ドリップ・商品表示」を確認すると分かりやすくなります。

ただし、見た目が新鮮だからといって、生で安全に食べられるとは限りません。特に刺身として食べる場合は、見た目だけで判断せず、刺身用・生食用として販売されている商品を選び、保存方法などの商品表示にも従うことが大切です。

農林水産省の「海の幸を安全に楽しむために~アニサキス症の予防~」でも、アジやイワシはアニサキスによる食中毒の原因となることがある魚として挙げられています。

一尾で買うときに確認したいポイント

一尾で買うときに確認したいポイント

イワシやアジを丸ごと一尾で買う場合は、魚全体を眺めるだけでなく、目、皮のつや、腹の状態、エラなどを順番に確認すると選びやすくなります。

農林水産省の「夏の食材で『涼』を感じよう<魚介類編>」では、アジについて、目が澄んでいて表面が銀色に光り、腹部にハリがあるものを選ぶポイントとして紹介しています。一般的な魚の鮮度を見る場合にも、目や体表、エラの状態は分かりやすい手がかりになります。

料理初心者なら、店頭では次の順番で見ると迷いにくいでしょう。

確認する部分選ぶときの目安見る理由
澄んでいて、みずみずしく見える魚全体の状態を確認しやすい
皮・体表光沢やつやがあり、ハリを感じる乾燥や時間の経過を見分ける目安になる
張りがあり、極端に崩れていない身の状態を確認しやすい
エラ鮮やかな赤色に近い鮮度を見る代表的なポイントのひとつ
身全体傷やつぶれが少ない持ち帰った後も扱いやすい

マアジの場合は、農林水産省が「目が澄んでいる」「表面が銀色に光っている」「腹部にハリがある」ことに加え、ぜいごがしっかりしていることも目安として紹介しています。ぜいごの位置や見分け方は前の見出しで説明しているため、買い物では「アジの尾の近くまで形がしっかり残っているか」を見る程度で十分です。

イワシは身がやわらかく傷みやすいため、表面にハリとつやがあり、エラが鮮やかな赤色をしているものが店頭で選ぶ目安として紹介されています。特に腹側がつぶれていたり、身が大きく崩れていたりする魚は、ほかの魚と見比べて状態を確認するとよいでしょう。

スーパーでは、次のように考えると実用的です。

  • 目だけで決めず、体全体の状態も見る
  • イワシは特に腹側の崩れや表面のハリを確認する
  • アジは目、銀色のつや、腹のハリを見る
  • 迷った場合は、複数の魚を横に並べて比較する

マアジも「目が澄んでいるから絶対に新鮮」とひとつの特徴だけで判断するより、目、皮、腹などを合わせて見るほうが分かりやすいでしょう。

一尾で選ぶときの結論は、ひとつの場所だけを見るのではなく、目→皮→腹→エラの順に魚全体を確認することです。料理初心者でも比較するポイントを決めておけば、鮮魚売り場で迷いにくくなります。

刺身や切り身で買うときに確認したいポイント

刺身や切り身で買うときに確認したいポイント

刺身や切り身を選ぶ場合は、身に自然なつやがあるか、パックの中に水分が多く出ていないか、商品表示が用途に合っているかを確認することが大切です。

一尾の魚とは違い、刺身や切り身では目やエラを確認できません。そのため、身の表面や切り口、パックの中の状態を見る必要があります。

農林水産省でも、解凍して販売される水産物について、パック内に「ドリップ」と呼ばれる水分が多く出ている場合は味が落ちている可能性があるため、少ないものを選ぶ方法を紹介しています。

刺身や切り身では、次のポイントを順番に確認すると分かりやすいでしょう。

確認する部分選ぶときの目安
身の表面乾いた感じが少なく、自然なつやがある
切り口大きく崩れたり、身割れしたりしていない
身の色極端なくすみや変色が目立たない
パック内ドリップが多くたまっていない
商品表示魚の名称、原産地、用途などを確認する
生で食べる場合刺身用・生食用として販売されているものを選ぶ

たとえば、同じマアジの切り身が並んでいる場合、身に自然なつやがあり、パックの底に水分がほとんど出ていない商品は比較するときの候補にしやすくなります。反対に、パックの中に赤っぽい水分が多く出ている場合は、ほかの商品と状態を見比べてみてください。

イワシの開きや切り身でも考え方は同じです。身がやわらかいイワシは形が崩れやすいため、身割れが少なく、表面が乾燥していないものを選ぶと調理しやすくなります。

商品表示も見逃したくないポイントです。消費者庁の「食品表示」では、食品を選ぶ際に役立つ原産地表示や、期限表示など食品表示の制度について案内しています。パックに表示されている名称、原産地、保存方法、期限などは、見た目と一緒に確認するとよいでしょう。

特に注意したいのが、生で食べる場合です。

アジやイワシは見た目がきれいでも、アニサキスなどの寄生虫がいないとは判断できません。農林水産省は、アジやイワシをアニサキスによる食中毒の原因になり得る魚として挙げ、生きた幼虫が付いた魚介類を生食すると食中毒を起こす場合があると案内しています。

そのため、家庭で刺身として食べる場合は、以下のような基本を守ることが大切です。

  • 「新鮮そうだから刺身にできる」と判断しない
  • 刺身用・生食用として販売されている商品を選ぶ
  • 保存方法や期限などの商品表示に従う
  • 購入後は冷えた状態を保って持ち帰る

農林水産省も、一尾の鮮魚を購入した場合はよく冷やして持ち帰り、速やかに内臓を取り除くよう案内しています。

刺身や切り身を選ぶときの結論は、見た目のつややドリップを確認しながら、商品表示も必ず見ることです。特に生食では「見た目の鮮度」と「生で食べられるかどうか」を別に考えると、安全面でも迷いにくくなります。

ドリップ」とは、魚や肉の身から出てパック内にたまる水分のことです。時間の経過や解凍などによって身から水分が流れ出る場合があり、パックを選ぶときはドリップが多くないか確認すると状態を比較しやすくなります。

イワシとアジについてよくある質問

イワシとアジについてよくある質問

イワシとアジは、どちらも身近な青魚ですが、脂の量や食感、見た目などに違いがあります。ここでは、料理や買い物で迷いやすいポイントを簡潔にまとめます。

イワシとアジはどちらも青魚?

はい。イワシとアジは、どちらも一般的に青魚と呼ばれる魚です。ただし、「青魚」は生物学上の正式な分類名ではありません。

イワシとアジはどちらが脂が多い?

食品成分表の生のマイワシとマアジを比べると、マイワシのほうが脂質は多くなっています。ただし、実際の脂の量は季節や産地、魚の大きさなどによって変わります。

子どもにはイワシとアジのどちらが食べやすい?

身の形が残りやすく料理にしやすい点では、アジを選びやすい場合があります。ただし、どちらも小骨に注意し、年齢に合わせて骨を丁寧に取り除くことが大切です。

刺身で食べるならイワシとアジのどちらがいい?

どちらも刺身で楽しめます。家庭で食べる場合は、魚の種類よりも「刺身用」「生食用」として販売されている商品を選び、保存方法や消費期限などの表示に従ってください。

アジ・サバ・イワシはどう見分ける?

アジは尾に向かってある「ぜいご」、サバは背中の波状の模様、マイワシは細長い体と体側に並ぶ黒い点が見分ける目安になります。大きさだけで判断せず、複数の特徴を見ると分かりやすいです。

イワシとアジの違い:まとめ

イワシとアジの違い:まとめ

この記事では、イワシとアジの違いについて、見た目や味・食感、旬、栄養、料理での使い分け、下処理、選び方まで詳しく解説しました。

イワシとアジはどちらも身近な青魚ですが、同じ魚の仲間ではありません。この記事では、スーパーでよく見かけるマイワシとマアジを中心に比較しました。

特に覚えておきたいポイントは次のとおりです。

  • マイワシは比較的細長く、体側に黒い点が並ぶことがある
  • マアジは体に高さがあり、尾に向かってある「ぜいご」が見分ける目安になる
  • マイワシは脂のコクや青魚らしい風味を感じやすい
  • マアジはうま味があり、比較的すっきりした味わいを楽しみやすい
  • マイワシは身がやわらかく、マアジは適度な弾力を感じやすい
  • 旬は全国一律ではなく、産地や漁獲される地域によって異なる
  • マイワシとマアジはどちらもDHA・EPAを含むが、含有量には違いがある
  • イワシは梅煮や蒲焼き、つみれなど、アジはフライや南蛮漬けなどに使いやすい
  • イワシは手開きしやすく、アジはぜいごを取って三枚おろしにすることが多い
  • 鮮魚を選ぶときは、一尾なら目やつや、腹の状態などを確認する
  • 刺身で食べる場合は、見た目だけで判断せず「刺身用」「生食用」の表示を確認する

イワシとアジは、どちらが優れているというものではありません。脂のコクややわらかな身を楽しみたいならイワシ、ほどよい食感とうま味を生かしたいならアジというように、料理や好みに合わせて選ぶのがおすすめです。

最初は見分けるのが難しく感じても、マイワシの体型や黒い点、マアジのぜいごなど、分かりやすい特徴から確認すれば判断しやすくなります。

スーパーでイワシとアジが並んでいたら、見た目だけでなく「今日はどんな料理を作りたいか」まで考えて選んでみてください。それぞれの違いが分かると、普段の魚料理も選びやすくなり、献立の幅も広げやすくなるでしょう。