スーパーに並ぶ数多くの醤油を前に、「どれを選べばいいの?」「何がどう違うの?」と悩んだことはありませんか?
同じように見える醤油でも、種類によって味や色、香り、さらには使い方まで大きく異なります。濃口や薄口、たまり、白醤油など、名前は聞いたことがあっても、どう使い分ければよいのか分からないという方は少なくありません。
この記事では、そんな疑問やモヤモヤをスッキリ解消できるように、代表的な醤油の種類ごとの違いや特徴、そして料理に応じた使い分けのコツを丁寧に解説します。
家庭料理をより美味しく、見た目も美しく仕上げるためには、醤油の選び方がとても重要です。味が決まらない、色が濃くなりすぎる、風味が物足りない、そんな悩みも、醤油を正しく選ぶことで驚くほど改善されます。
この記事を読み終えるころには、「この料理にはこの醤油!」と自信を持って選べるようになります。
醤油の種類ごとの違いと特徴を簡単解説

醤油にはさまざまな種類がありますが、見た目が似ているため違いがわかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
醤油は原料や製法、熟成期間、地域の好みによって、味や色、香りが大きく異なります。ここでは、それぞれの醤油の特徴と違いを初心者にもわかりやすく紹介します。
濃口(こいくち)醤油の特徴

日本でもっとも一般的に使われている醤油で、万能タイプです。
濃口醤油は、大豆と小麦をほぼ同量使い、約1年間発酵・熟成させて作られます。味のバランスがよく、塩味・旨味・甘味のすべてがほどよく調和しているのが特徴です。
醤油選びに迷ったらまずは濃口醤油を選ぶのがおすすめです。
淡口(うすくち)醤油の特徴

色は薄いが塩分は高め、素材の色や風味を活かしたい料理に向いています。
淡口醤油は、濃口よりも熟成期間が短く、塩分濃度はやや高め(約18%)。色が淡いため、煮物や吸い物、卵焼きなど、見た目をきれいに仕上げたい料理に使われます。
見た目を大事にしたい料理や、関西風の料理には淡口醤油がぴったりです。
たまり醤油の特徴

とろみと濃い旨味が特徴で、照り焼きや煮物に最適です。濃厚な味付けや深みを出したいときに重宝する醤油です。
大豆を主原料にし、小麦はほとんど使われません。熟成期間も長いため、色が非常に濃く、とろみがあり、旨味成分も豊富です。
「こってり味の醤油」といった印象で、焼き鳥のタレやうなぎの蒲焼きにもよく使われます。
再仕込み醤油の特徴

コクと香りが非常に豊かで、特別感のある料理に使いたい醤油です。「濃口醤油の上位互換」とも言える味わいです。
通常の醤油は仕込みに塩水を使いますが、再仕込み醤油はその代わりに生醤油を使って再度仕込みます。熟成も長く、風味が深くてまろやかです。
素材の味を引き立てたい場面にぴったりです。
白醤油の特徴

色が淡く、ほんのり甘みがある上品な味わいです。
主に小麦を使い、大豆をほとんど使わずに作られるため、色が非常に薄くなります。発酵期間も短く、淡くやさしい味が特徴です。
「透明なだしのような存在」で、茶碗蒸しや炊き込みご飯に使うと見た目も味も上品に仕上がります。料理に色をつけたくないときや、繊細な味わいを目指すときに使いたい醤油です。
甘口醤油と用途別醤油
特定の目的に合わせて調整された、便利で使いやすい醤油です。用途別醤油は、既存の醤油をベースに用途に特化した加工がされています。
- 甘口醤油:甘さが際立つ味わいで、九州地方を中心に人気のある醤油です。
- 刺し身醤油:旨味が強く、素材の風味を引き立てるよう甘めに調整されています。
- だし醤油は:昆布やかつお出汁が加わっており、つゆとしても使えます。
- 減塩醤油は:塩分を抑えつつも味がぼやけないよう、旨味や甘味で補っています。
用途別醤油は、料理のシーンに合わせて選ぶことで、手軽においしく仕上がる便利な醤油です。
醤油の違いを見分けるためのチェックポイント

醤油を選ぶとき、種類の名前だけで判断していませんか?実は、ラベルに書かれている原材料や製法、JAS表示などから、風味や使い方の違いが見えてきます。ここでは、醤油選びに役立つ4つの視点から見分けるポイントを紹介します。
原材料(大豆・小麦・塩分)の違いから選ぶ
醤油は主に「大豆」「小麦」「食塩」から作られているので、使われている原材料のバランスで、味や香りに大きな違いが出ます。
- 大豆が多いと、コクや旨味が強くなる
- 小麦が多いと、甘みや香ばしさが強くなる
- 塩分の量によって味のキレや保存性が変わる
醤油の種類 | 主な原料構成 | 色の特徴 | 塩分濃度(目安) |
---|---|---|---|
濃口醤油 | 大豆、小麦、塩 | 濃い赤褐色 | 約16% |
淡口醤油 | 大豆、小麦、米、塩 | 明るい茶色 | 約18% |
たまり醤油 | 大豆が主体、小麦は少量、塩 | 非常に濃い赤黒色 | 約16% |
再仕込み醤油 | 濃口醤油で再仕込み | 黒に近い濃褐色 | 約14% |
白醤油 | 小麦が主体、大豆は少量、塩 | 薄い琥珀色 | 約17% |
甘口醤油 | 濃口に砂糖や甘味料を加える | 濃い赤褐色 | 約14% |
大豆が多いと“だしのきいた味噌汁”のような深み、小麦が多いと“焼きたてパン”のような香ばしさに近づきます。
「丸大豆」と「脱脂加工大豆」の違いとは?

醤油に使われる大豆には、大きく分けて「丸大豆」と「脱脂加工大豆(だっし かこうだいず)」の2種類があります。それぞれに特徴があり、醤油の味や香りに影響を与えています。
現在、日本で流通している醤油の約8割以上が脱脂加工大豆を原料としており、主流となっています。
丸大豆の特徴
丸大豆は収穫したままの大豆をまるごと使ったものです。
丸大豆は、皮・胚芽・胚乳などすべてを含んだ、自然な状態の大豆です。油分を多く含んでいるため、醤油にしたときに風味がまろやかで、コクや深みのある味になります。また、熟成に時間がかかりますが、香りの豊かさや口当たりの良さがあり、まろやかな醤油になります。
脱脂加工大豆の特徴
大豆から油分を取り除いた後の加工原料です。
脱脂加工大豆は、食用油を搾ったあとの大豆の搾りかすを加工したものです。油分が少なく、発酵しやすいため、製造期間を短縮でき、うま味のある醤油になります。
製法別の分類:本醸造・混合・混合醸造・生しょうゆ

製法によって、味・香り・価格に違いがあります。
製法には以下のような種類があります。
- 本醸造:伝統的な製法。添加物なしで自然な風味
- 混合醸造:発酵後に調味液を加える。甘みや旨味が強め
- 混合:発酵時間を短くし、調味料を加えて味を整える
料理の質にこだわるなら本醸造がおすすめです。
JAS表示と等級で見る品質と風味の目安

JAS表示と等級を見れば、味や品質の目安がつきます。
JAS(日本農林規格)では、醤油に等級が定められています。
- 特級:旨味成分が多く、風味がまろやか
- 上級:バランスが良く、日常使いに最適
- 標準:価格が手頃で、風味はややあっさり
特級の中には「特選」や「超特選」といった格付けがあり、より高品質なものとして販売されています。これらはJAS規格に基づき、旨味成分の含有量がさらに多く、深みのある味わいが特徴です。
品質にこだわりたい人は、等級の高いものを選ぶと失敗しにくくなります。
地域による風味の差:関東・中部・関西・九州

地域によって、味の好みや醤油の使われ方が異なります。
日本各地では、料理文化とともに醤油の味も進化しています。
- 関東:濃口が主流。色が濃く、塩味が強め
- 中部(愛知):たまり醤油を多用。コクが強い
- 関西:淡口が多く、素材の色や味を大切に
- 九州:甘口醤油が主流。砂糖やみりんで甘さを加える
料理に合わせた醤油の使い分け

醤油にはいろいろな種類がありますが、料理に合った使い分けができると味がグッと良くなります。ただ濃口を使うのではなく、料理の色や素材の風味に応じて選ぶことが大切です。ここでは、よく使われる料理を例に、どの醤油が向いているのかを紹介します。
刺身に合う醤油は?赤身・白身を活かす選び方
赤身には濃厚で甘みのある醤油、白身には淡口や白醤油がおすすめです。市販の刺身醤油でも十分美味しく使えます。
赤身魚(まぐろなど)は旨味が強いため、濃い味の刺身醤油がよく合います。逆に白身魚(鯛やヒラメなど)は繊細な風味が特徴なので、醤油の味が強すぎると素材の良さが消えてしまう場合があります。
刺身の種類に応じて醤油を変えるだけで、家庭でも料理店のような味わいになります。市販の刺身醤油は刺身用に作られているので、市販の刺身醤油もおすすめです。
煮物・煮魚で色と味を決める最適な醤油

煮魚には濃口醤油が基本です。関西風に仕上げたいなら淡口も検討を。
煮物や煮魚では、味の決め手になるのが醤油です。濃口醤油はしっかりした色とコクを与えてくれます。色を抑えたいときや素材の色を活かしたい場合は、淡口醤油を使うことで上品な仕上がりになります。
煮物の仕上がりイメージに応じて、濃口と淡口を使い分けましょう。
漬け・タレに使える濃厚タイプの醤油とは
たまり醤油や再仕込み醤油がコクと旨味を与えてくれます。
たまり醤油は大豆を多く使っており、旨味ととろみがあります。再仕込み醤油は2度仕込みのため、香りとコクが非常に強いです。これらの醤油は素材にしっかりと絡み、漬け込むことで味が染みやすくなります。
濃厚な味を求める料理には、たまりや再仕込みを活用することで仕上がりに差が出ます。
茶碗蒸し・吸い物:色を控えて風味を残す淡い醤油

白醤油や淡口醤油が素材の色と風味を活かします。
これらの料理は見た目の美しさと、やさしい味わいが大切です。白醤油は小麦主体で色がほとんどなく、素材の風味を邪魔しません。淡口醤油も色が薄く、塩分で味を整えることができます。
見た目ややさしい味が重要な料理には、色の淡い醤油を使うのが最適です。
焼き物・照り焼き:照りと香りを演出する濃い色醤油
濃口醤油やたまり醤油が焼き色と香ばしさを演出します。
濃口醤油は加熱によって香ばしさが増し、きれいな焼き色と照りが出ます。たまり醤油はとろみがあるので、表面にからんで照り焼きに最適です。
焼き物には濃い色の醤油を選ぶことで、見た目も味もワンランク上になります。
醤油の保存と風味維持のポイント

醤油は時間とともに風味が変化するため、正しい保存方法を知っておくことが大切です。保存状態が悪いと香りが飛んだり、酸化して味が落ちたりします。ここでは、容器の種類や開封後の扱い方に注目して、醤油の風味を保つコツを紹介します。
醤油の容器で保存方法が変わる
容器の素材や構造によって、醤油の酸化スピードが変わります。
醤油は空気に触れると酸化しやすく、風味が落ちてしまいます。
- ガラス瓶やペットボトルは開封後に空気が入りやすく、劣化が早い
- 二重構造密封ボトルは酸化しにくく、風味を長持ちさせやすい
風味を長持ちさせたいなら、空気に触れにくい容器を選ぶことがポイントです。
開封後の扱い方

冷蔵保存と早めの使い切りが、鮮度と風味を保つコツです。ただし、二重構造密封ボトルに入った醤油であれば、常温でも一定期間は風味を保ちやすくなります。
開封後の醤油は、空気や光、温度によって劣化が進みやすくなります。
- ガラス瓶やペットボトルは開封後、冷蔵庫で保存するのが基本
- 二重構造密封ボトルは酸素に触れにくいため、冷暗所での常温保存も可能
- 卓上に置く場合は、少量を小瓶に移すことで本体の劣化を防げる
冷蔵保存が基本ですが、二重構造密封ボトルなら冷暗所での常温保存も可能です。容器の工夫を活かせば、扱いやすくなります。
家庭でおすすめの醤油3本

醤油の種類はたくさんありますが、家庭で常備するなら、まずは用途の広い3本を揃えるのがおすすめです。どれも使い勝手がよく、日常の料理をスムーズにしてくれる心強い調味料です。
- 濃口醤油:万能タイプで煮物・炒め物など幅広く対応
- 薄口醤油:色を控えたい料理や関西風の味付けに便利
- 刺身醤油:甘みと旨味が強く、生食をより引き立てる
この3本があれば、和食をはじめとする家庭料理の味付けの基本がカバーできます。容器は、酸化を防ぎ風味を保ちやすい二重構造密封ボトルのものを選ぶとより安心です。
醤油の使いすぎには注意

醤油の使いすぎは、味が濃くなるだけでなく、塩分のとりすぎにつながります。
醤油は塩分を多く含むため、少量でもしっかり味がつきます。使いすぎると料理全体が塩辛くなり、せっかくの素材の味を損なうことになります。また、健康面でも塩分の過剰摂取は高血圧などのリスクを高めることが知られています。
一般的には、1日あたりの塩分摂取を5g未満に抑えるよう推奨していますが、世界保健機関(WHO)は、2025年1月27日に1日あたりの塩分摂取を2g未満に抑えるよう推奨しています。
醤油は少しの量でしっかり味がつく調味料です。控えめな使い方を心がけることで、料理も健康もバランスよく整います。
醤油の種類の違いと使い分け:まとめ
この記事では、「醤油 種類 違い 使い分け」について、初心者の方でもわかりやすいように解説してきました。醤油はどれも同じに見えるかもしれませんが、実は味・色・香り・製法・用途まで、それぞれに明確な違いがあります。
料理をもっと美味しく、もっと自分らしく仕上げたい方にとって、醤油の使い分けは非常に大きなポイントです。
特に覚えておきたいポイントは以下の通りです。
- 濃口醤油は万能で基本の一本。迷ったらこれを選びましょう。
- 薄口醤油は色を控えたい料理に最適。関西風の煮物などに向いています。
- たまり醤油や再仕込み醤油は、濃厚な味や照りを出したい料理にぴったりです。
- 白醤油は見た目を美しく仕上げたい料理におすすめです。
- 用途別の刺し身醤油やだし醤油、減塩醤油も、料理や体調に合わせて活用すると便利です。
- 保存には二重構造密封ボトルを選ぶと酸化を防ぎ、風味を長く保てます。
- 開封後は冷蔵保存を基本にし、1〜2か月以内の使い切りを目指しましょう。
醤油の種類と違いを理解し、料理に合わせて上手に使い分けることができれば、毎日の食卓の満足度がぐっと上がります。特別な知識や技術がなくても、醤油を変えるだけで料理の印象が大きく変わることを、ぜひ日々の調理で実感してみてください。